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舞妓はレディのKamiyoのレビュー・感想・評価

舞妓はレディ(2014年製作の映画)
3.6
2014年 ”舞妓はレディ” 監督.脚本 周防正行

京都の小さな花街、下八軒にある老舗茶屋「万寿楽」。
節分の夜、「万寿楽」を訪れ、いきなり「舞妓さんにしてください」と言い出した少女・春子(上白石萌音)を、
女将の千春(富司純子)は追い返してしまう。
しかし、その場に居合わせた言語学者の京野(長谷川博己)は「鹿児島弁と津軽弁のバイリンガル」と言う強い訛りのある春子の言葉遣いに興味を持ち、自分が後見人となって、春子に京言葉を教える、と言うのだった。
翌春、春子は祖父母に付き添われてあらためて「万寿楽」を訪れ、見習いとして修行を始めるが……

たくさんの候補者の中からオーディションで選ばれた
ヒロインに名のある若手女優ではなく
全くの新人を起用したのが大成功。

春子を演じた上白石萌音は(鹿児島県串木野市生まれ)
僕も(鹿児島県串木野市生まれ)年代は違いますが
”上”が頭に付く苗字は、川内.串木野地区に存在する名前でそう言う僕も”上”が頭に付く苗字です、何か親近感がする
その彼女が素朴でいちいち可愛い。歌も上手い!
誰もが彼女を愛らしく見守ってしまう。
ポッと出のおぼこい田舎娘のイメージにぴったりです。
京ことばを始めとしてさまざまな方言の勉強だけでも大変だったのではないでしょうか? 映画の中ではほとんどスッピンでしたが、白塗りの舞妓さんになると本当に可愛い! 役を離れた普通のメイクをしているポートレートなどはかなりアイドルっぽいので、あのドン臭さも演出と演技力によるものだったのでしょう。

タイトルからも分かるとおり、本作はオードリー・ヘップバーン主演の往年の名作『マイ・フェア・レディ』からインスパイアされている。『マイ・フェア・レディ』では、貧しい花売り娘のイライザを言語学者のヒギンズ教授が、レディに仕立て上げるというシンデラレ・ストーリーだが、本作では、東北の田舎から舞妓に憧れてやって来た春子が、厳しい修行を経て、見事舞妓になる過程が描かれる。唄や踊り、礼儀作法に加えて、舞妓の必須条件「京ことば」をマスターしなければならない春子の奮闘がいじらしい。

老舗の料亭や、花街の置屋・お茶屋など「一見さんおことわり」という文化がある。何故だろう、スカしてんのか(笑)と思っていたが、お客様に対して行き届いたサービスをするための措置だった。つまり相手の好みや趣味などを把握していなければ、その人に合ったサービスができないということだ。老舗料亭や置屋・お茶屋は、とどのつまりサービスのプロなのである。これこそ日本文化の「おもてなし」の粋だ。

その日本の粋の極みともいう芸妓・舞妓の世界。海外からの観光客にも人気だが、日本人でもその世界のことはよく分からない。何せ一見さんおことわりの世界だ、日本人でもおいそれと近づけない。そんな芸妓・舞妓の世界を、周防監督が、ミュージカル仕立てのエンターテインメントとして描いた楽しい作品だ。

その昔、人工衛星が日本の上空を通過する際、京都の舞妓さんが「今日は人工衛星が通らはる」と言っていて、日本語の美しさを知った、とあるエッセイで読んだことがある。そのやわらかい音程と相手を尊重する言葉づかい(尊敬語とはまた違う)は、たしかに言語学者でなくとも魅了される。京ことばは音程の波形が、鋭角にならずに全て滑らかに波うつというのが本当なのかは分からないが
言語学者京野法嗣が、春子に京ことばを教えるくだりが、まんま『マイ・フェア・レディ』で楽しい。何せイライザが発音に苦労していた「スペインの雨は主に広野に降る」が、本作では「京都の雨は大概盆地に降るんやろか」になっていたりして、思わずニマニマしてしまう。これ以外にも、先輩芸者(演じるは周防監督夫人である草刈民代)が「お化けの日」の仮装で“緋牡丹お竜”に扮したり(“緋牡丹お竜”は、お茶屋の女将を演じている冨士純子の代表作)、随所に監督の遊び心に溢れている

「おかみさん」を演じた富司純子さん、すべてにおいてものすごい安定感でした。この方が出てこられると画面が引き締まりました。その存在感たるやさすがです。感服いたしました。
その富司純子さんと萌音ちゃんの二人の場面は、観ていて非常に「ほっこり」できるシーンが多かったです。
他、カメオ出演の方々も含めて、出演者の方々は豪華でしたね。脇の方々の安定した演技のおかげもあって、安心して作品を楽しむことができました。
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