MasaichiYaguchi

海と大陸のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

海と大陸(2011年製作の映画)
3.5
燦々と降り注ぐ陽光が眩しければ眩しい程、それが作り出す影はより濃さを増す。
地中海の小さな島リノーサを舞台に展開される本作は光と闇が際立ったコントラストを成す。
青い空と海を満喫し、レジャーボートで陽気な音楽に合わせて踊り、嬌声を上げる溢れんばかりの観光客達。
逆にそこへ戦争や迫害から逃れ、命からがらアフリカ北部から筏に乗って漂流してきた溢れんばかりの難民達。
難民達が漂着した国からすれば、彼らは「招かねざる客」。
彼らは必死にここまで辿り着いたのに、「双六のふりだし」よろしく本国に強制送還されてしまう。
私は本作を観て初めて、大勢のアフリカ難民がイタリアに船で漂着している実態を知った。
この作品では二組の母子が登場する。
地元で代々漁業を営むプチッロ家の長女ジュリエッタと20歳の息子フィリッポの母子、もう一組は、このフィリッポとその祖父に溺死寸前を助けられたアフリカ難民の母子。
この二組の母子は、最初は対照的な存在のように感じられたが、ストーリーが進むにつれて「合わせ鏡」のような関係に見えてきた。
ジュリエッタは生業である漁業の先行きに限界を感じ、息子と一緒に島を出たいと感じている。
アフリカ難民の母サラはトリノで働いている夫の許へ行きたいと願っている。
この二組の母子が希求しているのは「幸せな暮らし」。
初めはアフリカ難民母子を迷惑な存在と思っていたジュリエッタも、懸命に生きようとするサラの姿に心を通わせていく。
この作品は、肌の色や人種、生まれ育った環境、難民であるとかないとか、そのような違いを越えて、「同じ人間としてどうあるべきか」と我々に問い掛けている。
「明けない夜はない」
光溢れる希望の世界を求めて進む彼らに、どのような未来が待っているのか、本作はその結末を我々の想像に委ねている。
その結末がどうであろうと、ラストに私は希望と勇気を感じた。