MasaichiYaguchi

ありふれた教室のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
3.8
或る中学校で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと進み、校内の秩序が崩壊していく様を、ひとりの新任教師の目を通して描いたサスペンススリラーは、リアルな現実に根ざし、世界中の学校やあらゆるコミュニティでいつ暴発しても不思議ではない、“いまそこにある脅威”を炙り出す。
仕事熱心で正義感の強い若手教師のカーラは、新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を得ていく。
或る時、校内で盗難事件が相次ぎ、カーラの教え子が犯人として疑われる。
校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自に犯人捜しを開始する。
密かに職員室の様子を撮影した映像に、或る人物が盗みを働く瞬間が収められていた。
しかし、盗難事件を巡るカーラや学校側の対応は、やがて保護者の批判や生徒の反発、同僚教師との対立といった事態を招いてしまう。
後戻りの出来ないカーラは、次第に孤立無援の窮地に追い込まれていくことになる。
ドイツの義務教育は9年間(一部は10年)で、6歳から4年間の初等教育を施す基礎学校または高校まで通える総合学院で学んだ後、中等教育へと進む。
一貫校を選べない多くの子どもたちは10歳にして人生の分岐点に立つことになり、親にとっても進学先選びは最重要課題となる。
本作の舞台は10歳で進路を選択した15歳までの生徒たちが通う中学校で、主人公でポーランド系ドイツ人のカーラは、生徒との交流を最優先に精力的に授業を続けている。
ところが、或る盗難事件の発生が学校の“不都合な真実”を炙り出し、学校という場所を“現代社会の縮図”に見立てて、我々に正義や真実の曖昧さを浮き彫りにする。