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将軍の娘/エリザベス・キャンベルのTOTOのレビュー・感想・評価

4.8
『骨太で重厚なサスペンス――』

1999年に公開された『将軍の娘』は、ネルソン・デミルの同名小説を映画化した作品です。
監督はサイモン・ウエスト。主演は我らがジョン・トラボルタ。
トラボルタの頭髪的にはこの頃がピークかな。これ以降はいろいろ乗せたり植えたり剃ったりして、出口の見えない迷路に迷い込みます。
またサイモン・ウエスト監督もこの作品をきっかけに一流監督の仲間入りを果たした感がありますが、その後、本作を超えるブレイクにはお目にかかっていない。
つまり主演、演出共に最盛期にある二人が、がっつりタッグを組んだ作品という事ですね。だからつまらない訳がない。とにかく完璧なのです。

舞台は米南部ジョージア州の陸軍基地フォート・ベニング。
次期副大統領の有力候補と噂されるジョージ・ギャンベル中将のひとり娘、エリザベス・ギャンベル大尉が、基地内で全裸他殺隊として発見されるショッキングな事件から物語はスタートします。
その捜査を命じられたのは陸軍犯罪捜査部のポール・ブレナー准尉。ネルソン・デミル作品ではシリーズで主人公を務めるタフガイです。
アメリカ陸軍の中で「准尉」という位は、将校と下士官、そのどちらにも属さない一種治外法権的な役職で、例え相手が上官であっても准尉には逮捕権があるのだそうです。上下関係に非常に厳しい軍隊内において、内部犯罪を取り調べる捜査官には必要不可欠な特権なんですね。
そのブレナー捜査官が調査を進めていくと、軍隊と言う極め付きの男性社会で出世してきた、才色兼備で、頭脳明晰、加えて容姿端麗なエリザベス・ギャンベル大尉の、裏の顔が見えてきます。
それは乱れた男性関係と、ビデオに録画された過激な性行為の数々。それこそ偉大な将軍である父親の沽券に関わる醜いスキャンダルでした。
その為、陸軍上層部からはキャンベル中将の将来を案じ、法律に則るのではなく、あくまで陸軍式の解決方法を求められるブレナー捜査官。それはこの事件の真相を公にするなという暗黙のメッセージでした。
しかし元来が鼻っ柱強く、長いものにはそう簡単に巻かれない強気のポール・ブレナー捜査官ですから、アンタッチャブルなどなんのその、果敢に聖域なき捜査を進めていきます。
その結果、ブレナー捜査官は事件の真相を詳らかにするのですが、それは「ウエストポイント(陸軍士官学校)」時代にまで遡る、実に悲しく、また実に罪深い真実だったのです。
エリザベス・キャンベル大尉を死に追いやった「最も悪い人物」とは――。
その責を負うべきは誰なのか――。
 
原作はネルソン・デミルのベストセラーですから、ストーリーが素晴らしいのは当然として、それを約二時間の映像作品として誠実に脚色した手腕も見事だし、サイモン・ウエスト監督の演出もメリハリが効いて流石です。
特に夜のシーンは神秘的で美しく、昼間のシーンからはアメリカ南部のじめじめとした湿度が伝わって来て、臨場感満点なのです。
また脇を固める役者陣では、ジェームス・ウッズ演じる、ギャンベル大尉の上官役が存在感たっぷりで、ずば抜けています。
実際、彼はIQ180の天才で、怪我がなければ空軍士官学校に進むつもりだったそうで、その意味でもハマり役。猫の血だらけの足跡がまた――。
とにかく、この作品はプロットも、謎の解き明かし方も、キャラクターや人間関係の描き方も、そして物語としての芯の強さも含めて完璧だと思います。
 
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