しゅうへい

悪い子バビー/アブノーマルのしゅうへいのレビュー・感想・評価

4.5
『悪い子バビー』(1993)
原題:Bad Boy Bubby

「奇妙で、無情で、過酷でも、愛に溢れた人生。」

■「ドアの外に出れば、汚染された空気の猛毒で命を落とす。」そんな母親の教えを信じ、35年間、暗く汚い部屋に閉じ込められていたバビー。身の回りのすべてを母親が管理し、ただそれに従うだけの日々を送っていた。ある日、何の前触れもなく"父親"だと名乗る男が帰ってきたことをきっかけに、バビーの人生は動き出す。

■社会から隔絶されて育った男が多くの人々との出会いや音楽に導かれて自分自身を発見していく姿を描き、1993年・第50回ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した作品。映画の常識を凌駕する世界的傑作、30年越しの日本初公開!

バビー(BABY/ベイビー)。見た目は独特な髪型のおじさん。中身は純粋無垢な子供。善悪の区別がつかない、外の世界を知らない彼が好奇心で犯した過ち、そして意図せず手に入れた自由。言葉、音楽、暴力、宗教、美味しいピザ。刺激に満ち溢れた外の世界で、バビーは人々と出会い、様々な経験を積んでいく。いつも頭にあるのは音楽と豊満なおっぱい。

初めはただのグロアングラ映画かと思った。ただ気付けば“笑えて涙する成長物語”に昇華される。色んな意味で感情が掻き乱される稀有な作品。「笑あり涙あり」なんて序盤では誰も予想できない。『Mr.ビーン』を過激に、胸糞悪く、生々しく描いたような作品。「バイノーラルサウンド録音」によりバビーの視覚聴覚とリンクする。93年の作品とは思えない没入感。

母親による子供の監禁と虐待、性や宗教的タブーという挑発的なテーマ。猫(人形・CG)虐待描写あり。G虫の捕食描写あり。暴力・レイプ・近親相姦描写あり。ちなみにモザイク一切無し、規制のオンパレード。これぞ表現の自由。日本版はVHSのみ。今まで日本で公開されてこなかったのも納得。ただそれだけで観ないのは勿体無い。耐え難い苦痛の先にある感動。気軽にオススメできないからこそ、観た人と感動を共有できる、そんな作品でした。

LOVE新宿武蔵野館。
今作のTシャツ売り切れ残念、パンフ無事購入!
展示・待合室・グッズ・喫煙所、いつ来ても満点。
しゅうへい

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