Omizu

裏切りのサーカスのOmizuのレビュー・感想・評価

裏切りのサーカス(2011年製作の映画)
3.8
【第65回英国アカデミー賞 英国作品賞、脚色賞受賞】
『ぼくのエリ 200歳の少女』トーマス・アルフレッドソン監督がジョン・ル・カレの同名小説を映画化した作品。ヴェネツィア映画祭コンペに出品され、英国アカデミー賞では英国作品賞を受賞、アカデミー賞でも主演男優賞(ゲイリー・オールドマン)、脚色賞、作曲賞にノミネートされた。

難しいという噂は聞いていたが舐めてた。色んな要素が絡み合って一つになったような作品で、一度観ただけでは全体像が把握できない。

非常に硬質な政治サスペンスで、同じくゲイリー・オールドマン主演のドラマ『ザ・オールドマン』はこれがやりたかったんだと気付いた。カンバーバッチ、コリン・ファースを中心とした主要キャストの演技も素晴らしい。それぞれの個性を活かしつつ抑えた演技が印象的。

サーカスとは英国諜報部のことで、そこで巻き起こる政治サスペンスを非常に上手く描いている。『ぼくのエリ』とはまた違った角度で名作を生み出したトーマス・アルフレッドソン恐るべし。

誰が裏切ったのか、誰が本当の味方なのか、そもそも本当の味方なんているのか。演技派俳優たちがそれぞれに妖しい魅力を放ち作品に華を添えている。

決して派手な展開やアクションがあるわけではないが、ハッとするような気付きがある描写がいい。一応主役はオールドマン演じるスマイリーであるが、彼の視点が本当のものなのかすら疑ってかかった方が良い。

表面的には地味なサスペンスであるが、観れば観るほど味が出てくるような豊かな作品に仕上がっている。語り口といい脚本といい全てが豊かで味がある。評価が高いのも頷ける良作だった。全てを知った上でもう一度観たい。
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