三四郎

タイタニックの最期の三四郎のレビュー・感想・評価

タイタニックの最期(1953年製作の映画)
3.5
冒頭に、
「この作品に登場する人物、会話、出来事などは、1912年に発表された米国会議及び英国商務省の調査報告書に基づき忠実に再現されたものである」という説明が出てくる。

事実を組み合わせて物語を作ったのだろうが、よく出来ている。脚本が素晴らしい。アカデミー賞脚本賞を受賞したのが頷ける。

去り行く救命ボートに聞こえてくる「ロンドンデリーの歌」。この時の、バーバラ・スタンウィックの、「妻」そして「母」としての表情が忘れられない。メロディが聞こえてきて、夫と息子が残るタイタニックを振り返り見つめる…その涙で潤む瞳。

沈没の直前、タイタニックに残る人々が歌った讃美歌「主よ、御許に近づかん 」も心にジーンと来たが、「ロンドンデリーの歌」の方がさらに心揺さぶられた。

娘と息子をヨーロッパの上流階級の生活に慣れた高慢で気取った人間にしたくないと離婚しようとしているミシガン育ちの妻と社交界に伊達男として名が通っている夫。
タイタニック沈没に際し、人命救助を率先して行う夫を見た妻は「あなたがダンスだけの男じゃなかったことがわかったわ」と涙ながらに言う。
人の真価というものは、絶体絶命になった時に、危機に瀕した時に初めて現れるのかもしれない。
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