氷雨水葵

劇場版 空の境界/第一章 俯瞰風景の氷雨水葵のレビュー・感想・評価

4.0
2023年118本目

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◆あらすじ
廃墟と化した巫条ビルで相次ぐ少女たちの連続自殺。

そして、ビルに近づいたために昏睡状態に陥ってしまった黒桐幹也(CV:鈴村健一)。

ビルの屋上に浮遊する少女たちを目撃した両儀式(CV:坂本真綾)は、幹也を取り戻すため夜の巫条ビルに赴く―――。

◆感想
2024年1月にガンダムSEED公開ということで、鈴村夫婦共演(2007年時はまだ夫婦ではないが)の作品を漁っていたら・・・という流れ。いや、無理がありすぎない?というツッコミはなしで。

ひっさしぶりに鑑賞しましたがufotableの作画、梶浦由記の音楽、声優さんの演技、脚本や台詞回し、武内崇のキャラデザetc…やっぱりすべてが素晴らしい。『空の境界』のタイトルが出るOPがとにかく神秘的で美しい。映像はもちろんのこと、Kalafinaの透き通る歌声が耳に心地よく、作曲した梶浦由記に頭が上がらない。そして、ここぞとばかりにOVA感を醸し出してくる作品の雰囲気が良いッッ!!原作未読勢には優しくないけれど、余計な説明を省くことで『GHOST IN THE SHELL』や『マルドゥック・スクランブル』などの古のOVAに近いものを感じさせてくれる。確かに、一昔前のOVAってこんな感じだったなあとしみじみしますね。

さて本作は、自殺者が相次ぐかつてのシンボルタワーに近づき、昏睡状態に陥った黒桐幹也を取り戻す両儀式の物語。見どころは、空にあるひとりの少女の意識と俯瞰を断つ直視の魔眼。序盤から謎めいた雰囲気が漂っていて好き。不穏かつ神秘的な劇伴は『Pandora Hearts』や『Fate/Zero』っぽく、ファンにはぶっ刺さること間違いなし。橙子さんの名言もたくさん飛び出し、奈須きのこ独特の世界観を感じられます。

個人的にお気に入りのシーンは、式と浮遊する少女たちの戦闘シーン(中盤)。ぬるぬる動くのはもちろんですが、青色や緑色に映える黄色い雨合羽と赤い革ジャンの演出が良い。ufotableらしい原色の使い方と廃れたビルの対比もよく、とくに赤やピンクで所々煌々としているのも素晴らしい。ナイフ一本で蝶のように舞う式も良き!!そして、終盤のイチゴアイスの件にはきゅんとしたぞ。「オレの勝手だろ(ぷいっ)」と言いながら少し赤面して顔をうずめる式たまらんんんん。ぷくーってほっぺたを膨らませてるのもくっそ可愛い。

さらに、エンディングテーマがこれまた良いのだっっ!Kalafinaが歌う『oblivious』曲単体では何度も聴いたけど、作品とあわせて聴くとまた一味違って滾る。滾る。

テレビアニメみたいに次回予告で終わるの丁寧すぎる。この時点ですでに本作より前の話であることがわかるし、空の境界という作品を紐解く大事なエピソードだと伝わってくる。ちなみに「俯瞰風景」は時系列でいうと4つ目。
氷雨水葵

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