KnightsofOdessa

クワイエット・アースのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

クワイエット・アース(1985年製作の映画)
4.5
No.731[静かな地球のその先へ…] 90点

つい先日亡くなっていたジョフ・マーフィの追悼企画として彼の初期三部作「明日なき疾走」「UTU/復讐」「クワイエット・アース」を後ろから観ていく企画。ニュージーランド映画界の期待の星だった彼もハリウッドの荒波に揉まれて結局は出戻ってきて、最終的に「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの第二班監督という(重要なんだけど)微妙な役割を担うくらいに落ちぶれてしまう。

"静かな地球"という原題が示す通り、本作品は"自分以外の人間が消え去った地球"を舞台に物語が展開する。しかし、たった一人になった序盤において状況を説明する無駄な独り言や雰囲気を持ち上げるだけの無駄な音楽が存在せず、映画そのものが静かなのだ。主人公ザックは当初それを堪能するが徐々に発狂していくのは鉄板展開。しかし、ここで彼がとる行動が凄い。まず、夜になって高級ホテルの庭に過去の偉人たちの等身大パネルを並べ、それに向かって演説をする。そして、電力が底を尽き、演説が終わると共に世界は闇に堕ちる。次にザックはショットガンを持って教会へ向かい、"神はどこだあああ"と言いながらキリスト像を撃ちまくる。天才かよ。

そこに一人の少女が現れ、ザックと少女は協力して街中から人間の痕跡を探し、今起こっている事態の解析を始める。やがて、マオリ族のおっさんも仲間に加わり、三人で共同生活が始まる。ここらへんの流れも流麗で美しい。三人の力関係が些細なことで微妙にかつ常に変化し続ける様が抜群に素晴らしく描けている。反目し合ったりしてもすぐに意思を統一し、"現状を打破する"という目的のために動き続ける姿をある種軽妙な独特のタッチで語っていく。

んで、このラストである。いや、自明に天才でしょ。常人はこんなことせん。何が凄いって、もっと静かになっちゃったのだ。ブリット・マーリングは「アナザー・プラネット」で参考にしたのだろうか(あんまり覚えてないけど)。
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