Kuuta

フィラデルフィア物語のKuutaのレビュー・感想・評価

フィラデルフィア物語(1940年製作の映画)
3.6
上流階級のバツイチお嬢様トレイシー(キャサリン・ヘプバーン)が再婚する事になり、婚約者のジョージ(ジョン・ハワード)、元夫のデクスター(ケーリー・グラント)、特集記事の取材に来たコナー(ジェームズ・スチュアート)が屋敷にやってくる。会話中心のラブコメ。

写真に撮られる事を意識し、記者の前で演技する序盤。人の本質は動作の中に現れるし、だからこその映画なのだが、カメラは偽の関係を記録してしまう。

人物が横並びで会話する、平べったい写真のような画面が非常に多い。この画面の中では起伏のない会話しか発生し得ず、言葉がつらつらと流れていく。

会話に第三者が入るには、フレームインするか、カットを割るかの二択となる。前者の場合は会話の流れが保たれるが、後者の場合は割り込んだ形になる。割り込んだ第三者に対して元の会話者が切り返しで応じるかどうか。

美しいが傲慢なトレイシーを、ジョージは女神として崇めており、下から見上げる構図が取られるものの、切り返しはない。コナーと恋に落ちるトレイシーはコナーを見上げている。ラストはなかなか洒落た切り返し。

冒頭のセリフ無しの夫婦喧嘩が素晴らしいが、床に転んだり、落っこちたり、ヨーヨーが出てきたり、馬に登ったりと上下動が何度も何度も繰り返されている。こっちの動きこそが本質。白いローブの女神であるトレイシーは、自分が「信仰」されてばかりで愛されていない事を知り、プールに飛び込んで人間になる。

元はブロードウェイの作品らしい。会話量が膨大で、恐らく平たい画面の間も気の利いた事を言いまくっているのだろうが、私の英語力では全然キャッチできず。要所要所での上下動と切り返し(特に上記のプールに飛び込むくだり)には心躍った。
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