『バルスーズ』にハマり過ぎて、ベルトラン・ブリエ監督の他作品を突っつきました。
しかしこれ、なんなの?
フランスのシュールさたっぷりで笑ったもの勝ちみたいな、笑えないと大変困ってしまうコメディクライム。
始まりからして超〜ユニーク。
人っ気のない地下鉄駅でナイフを隠し持った失業中の男アルフォンス(ジェラール・ドパルデュー)が、初老の男(ミシェル・セロー)に執拗に近付き「あなたの耳を見ているだけです」と呟く。気味悪くなり初老の男が場所をズレるとまた近付き「人を殺したくなる時はないですか?」と訊ねる。
こんな男に関わりたくないとやって来た電車に乗り込んでいく初老の男。
アルフォンスが駅の通路を歩いていると、先ほどの初老の男がお腹をナイフで刺されている。なぜかそのナイフはアルフォンスのもので、男は「困ってるだろう、使いなさい」とお金をくれて死んでしまう。そのナイフを抜き取り、帰宅して妻(リリアン・ロヴェール)に話すと、妻は驚いた風でもなくナイフを食洗機に入れてしまう。そして、自分たち以外に誰も住んでいないアパートに引っ越して来た隣人がいると。
アルフォンスは様子伺いに挨拶に出向くと、隣人の男(ベルナール・ブリエ)は寡の警部だと言うので、駅の殺人の顛末を伝えたが「今日は非番だから」と相手にしない。
翌日、アルフォンスの妻が失踪し死体となって発見される。
アルフォンスが家にいるとブザーが鳴り、妻を殺したという犯人(ジャン・カルメ)が立っている。
アルフォンスと警部、そして臆病者の犯人の3人が連んで行動するという、不条理に不条理が重なり、なんと殺人にまた殺人が重なっていく。
全く現実味がなくなってくるが、最終的なオチが、あ〜なるほど〜と繋がる。
駅、アパートの部屋の中、エレベーターの中など鮮やかな色使い、そして山、川、吊り橋、ボートと自然の中にも目を奪う美しさがある。
社会の中での希薄な人間関係、孤独、人間性の喪失を訴えているのかな?
キャストは名優ベルナール・ブリエ(監督の実父)のほか、ジャン・カルメ、マルコ・ペラン、常連らしい美しいキャロル・ブーケがラストに出てくる。
あ〜へんてこりんなのに面白かった。