TAK44マグナム

血みどろの入江のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

血みどろの入江(1970年製作の映画)
3.6
「デモンズ」シリーズで有名なランベルト・バーヴァ監督のお父さんであるマリオ・バーヴァ監督による、スラッシャーの元祖のひとつだそうで。
マリオ・バーヴァといえば有名な監督さんですが良く知らず、作品も観たことがありませんでした。
しかし、個人的に産まれた年にスラッシャーの礎となるような重要な作品を撮っていると知り、本作に興味を持った次第でありまして、どうやらバーヴァ本人もお気に入りの一作らしいですね。
そこでOSOREZONEさんで配信されているのを見つけたので観てみると、たしかに自画自賛したくなるようなイカした演出やカットが多く、評価されるのも分かる気がしました。
なるほどセックス中に串刺し等、「13日の金曜日」が引用して、その後のホラーの定番となった場面もありますしね。
カットの繋ぎも非常に凝っていて印象に残ります。
一周まわって、今みてもかなりオサレ。
また、やたら能天気そうな音楽や太鼓の音が陰鬱な物語の明度を上げるのに一役かっていますが、そういった雰囲気はイタリアならではなのでしょうか。


それでもってお話はというと、よく分からないままに登場人物たちがゾロゾロと、所有者を失った入江に集まってくるんですね。
中には本筋とは全く無関係な若者グループもいて、こういった人物配置がどこかスラッシャーぽくもあります。
で、当然の如く人がガンガン殺されてゆきます。
後半ともなると、猛烈な勢いで登場人物たちが退場の憂き目にあうのです。
そんなわけで、自然豊かな入江の権利を巡って次から次へと人が無惨に殺されるのを眺めるだけの86分でありますが、テキトーな殺人計画だったり、たんなるとばっちりだったり、○○のお遊びだったりと様々な思惑が複雑に絡み合います。
とはいうもののサスペンススリラーとしての趣きよりも、断然スプラッターなスラッシャーとしての趣きがある作品。
ストーリーそのものよりも、凄惨で派手な殺害シーンが間違いなく見どころになっていますからね。

約50年前の作品としてはかなりハイレベルな特殊メイクで、一連の殺害シーンは今みても遜色ありません。
特に斧が顔面に刺さる場面は出色の出来映え。
タコが這い回る死体や、完全に作り物な首チョンパも50年前の作品だと思うとどれも唸らされるクオリティで、残酷なモノを見せてやろうという気概に溢れています。
全体の構成に関して明らかに難があるし、若者たちが戯れる場面など多少ダレる箇所もあるものの尺も短く、中盤以降はテンポ良く畳みかけるように事件が起きるので退屈しないで済むでしょう。

製作年代からしてクラシカルなジャーロの範疇に入る作品なのでしょうけれど、その中身は身勝手さが生み出した殺し合いで埋め尽くされています。ミステリー要素よりもヴァイオレンス色が勝り、意味もなく狂ったラストも最高に嫌な余韻を残してくれましたよ。
これぞまさしく因果応報・・・(汗)
殺人からハピネスは得られません。
どこか殺伐とした現代に生きる我々にとって、非常に有難い教訓ですな!
でも本当、非道いラストに目が点になりました。ビックリ!


OSOREZONEにて