TAK44マグナム

スポンティニアスのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

スポンティニアス(2020年製作の映画)
3.8
ジョン・ランディスが口から火を吐く「スポンティニアス・コンバッション」とは全然違う映画です(苦笑)
伊藤潤二の世界観で明るく難病モノをやっている感じのニューウェーブ系。
最終的には「タイタニック」にも通じるところがあると思いました。


ある日突然、ある高校の生徒たちが文字通り「爆発」する現象が起き始める。
痕跡として残るのは大量に飛び散った鮮血。
いつ死ぬか分からない絶望的な状況下、主人公はある男子生徒から告白され、やがて2人は強く結ばれるのであったが・・・


と言った、一風変わった青春残酷物語。
残酷といっても「ザ・ベビーシッター」や「ラブ&モンスターズ」のブライアン・ダフィールドの脚本なので、どこまでもポップでキャッチー。
やはり映画オタクな会話がポンポン飛び出るし、会話がシャレてます。

内容としては大人になる一歩手前、どこにでもいる高校生の主人公が事件を通して人生の真理を悟るというもの。
人の一生は永遠ではなく、ましてや決して長くもない。
一寸先はまさしく闇。
何が起きるか分からない。もしかしたら爆発して死ぬかもしれないのだから。
だからこそ「いま」を大切に噛み締めて生きるしかない。
僕の母親も数ヶ月前に突然風呂に入ってて亡くなり、本当に何が起きるか分からないのが人生だと学びました。
コロナ禍もそうですし、自然災害などの厄災も多い今、何が大切なのかを自分に問いたくなる、時代にマッチした良作だと思います。
「スポンティニアス」って「自発的」って意味もあるので、きっと他に依存するのではなく、自発的に未来を切り開いていってほしいというメッセージが込められているのではないでしょうか。

ホラー映画として観ると拍子抜けしてしまうかもしれませんが、スティーブ・カレルが隕石パニックに陥った世界で大切なモノに気付かされるが破壊描写そのものは全く描かれない「エンド・オブ・ザ・ワールド」と同様、本作もストーリーから想像したほどはゴアに描かれないので(なにしろ主人公は途中まで人体爆発を目撃しないようになっている)人体が爆発するというホラーめいた部分はいわば「目を引かせるための」舞台装置みたいな役割なのでしょうね。
そして、それは成功しています。


主演はキャサリン・ラングフォード。
よく知らない女優さんでしたが、目ヂカラが強い美人さん♫
ロマンティックな唇も魅力でした。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」では幻のカットシーンでモーガン・スタークを演じています・・・ということは今後のMCUにも参加があり得る??


最後に、本作を観て個人的に少し思ったところを・・・
それは「世界がもし100人の村だったらどうだろうか」でした。
以前、そういった思考実験が流行りましたよね。
事故や病気で毎日、誰かが死んでゆきます。
いまこの瞬間にも。
でも、70億人以上もいれば自分を含めて近しい者が死ぬ順番はそうそうまわってこないけれど、もし100人しかいなかったら凄い勢いで人が死んでゆくような感覚に陥るのではないでしょうか?
(実際には死ぬ機会も損失するので、そんな風な感覚にはならないかもしれませんが)
つまり「死」を現実的に捉える機会が増えると思うのです。
ギュッと凝縮された世界では一瞬一瞬がもっと尊く感じられるかもしれない。
もっと必死に、何かを目指して生きるようになるかもしれない。
そう考えると世界に人が溢れ過ぎ、生きる意味を失いつつある今は「生」の価値が著しく下がってしまっている時代なのかもしれません。
終末を身近に感じつつ生きた方が充実するのかどうか?
それは分かりませんが、本作のラストで主人公が語るモノローグは「死んだように生きている現代人」に対して「本物の生」を示唆する、含蓄に富んだ帰結だったと思うのです。


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