Toineの感想文

ドリアン・グレイのToineの感想文のレビュー・感想・評価

ドリアン・グレイ(2009年製作の映画)
3.7
【綺麗なものを壊したい。壊れる過程を観察したい。】
画家の描いた絵は心を写す鏡のように冷酷に。
自宅オスカー・ワイルド祭り第3弾でございます。
例によって「ドリアン・グレイの肖像」の映画化作品をコンプリートいたしました。

今作のドリアン・グレイ役はベン・バーンズ様。
かかかかかっこいー!
3作品の中で1番好みなドリアン様が爆誕!!
一気に熱くなる会場(=私の自宅)!
原作とは違う黒髪黒眼のドリアン様が妖艶かつミステリアスで良すぎる♡♡
髪の毛と瞳の色は漆黒が1番萌える。
更にコリン・ファース様までご出演とは。
コリン様がドリアン青年を悪の道に招き入れるという美味しいヘンリー卿の役…神、いや悪魔だ♡
彼らをキャスティングしてくださったことに拝み倒して感謝申し上げたいです。

"ルッキズム"とか"ドリアン・グレイ症候群"という言葉があるように外見の良さに拘る気持ち、凄く分かります。
元々の顔面が美しければ美しいほど現状維持したいのは尚の事でしょう。
さり気なく19世紀のメンズ服の可愛いさにも気付かされてますますテンション神上げ。
黒いアウターに白シャツに大きいタイの組み合わせがたまらん♡♡
バーンズ様の黒髪と完全にマッチしておりました。

ストーリーは原作小説をより分かりやすくまとめた親切な作りでございました。
少し脚色もしてありまして、今作のヘンリー卿の存在がドリアン様にまとわり付く悪魔そのものという感じ。
彼の可哀想が引き立って非常によろしゅうございます。
原作には無い幼少期の辛い思い出を匂わせる描写も大いにありありのありだと思います。

シヴィルさんが居なくなってから心にぽっかり穴が空いてしまったドリアン様。
本当はずっと寂しかった。だからあんなにもがむしゃらに堕落と快楽に溺れて行ったのでしょう。
だけど一時の快楽なんて愛する人を失った穴埋めにはならない。
あの人はあの日から一生戻って来ない。
もう二度と会えない。
哀しい。

そして今作の肖像画は"醜く老いる"というより"醜く腐敗する"といった惨状。
描かれた美しいドリアン様の瞳から零れ落ちる1匹のウジ虫。
なんて素晴らしい演出。
気持ち悪さ満点でした。
シヴィルさんの喪失から数え切れないほど重ねてきた彼の業が詰め込まれた腐った絵。

20歳でロンドンにやって来た何も知らない無垢な美青年は貴族たちに操られて踊り続け、いつしか壊れて捨てられるマリオネットのよう。
因果応報が降りかかりそうだったのに…結局最後に欲しいものを手に入れた諸悪の根源、ヘンリー卿。
オチも残忍で良かった。
最初からあの結末を全て計算していたのかな?
私は彼の気持ちが凄く理解できてしまう。
美しい人が少しずつ滅びの沼へ溺れて沈んで行ってしまう。
その様子を近くでずっと見届けたい。
手は貸さない。
直接でも間接的にでも構わない。
少しずつ少しずつ壊したい。
破滅するまでずっと傍らで。