金宮さん

アルゴの金宮さんのレビュー・感想・評価

アルゴ(2012年製作の映画)
4.0
実話なんで助かるのわかってるんですけどね、なんでこんなにハラハラするんだろう。自分の中の健全な感受性を確認できて嬉しくなる。空港のシーンなんて胃がキリキリした。赤ちゃんを抱っこしながらヘッドホンで観てたんですが、私の緊張が伝わり起こしてしまったほど。

1970年代のイラン革命期、はちゃめちゃだった前政権へのアメリカの肩入れは嫌米を巻き起こし大使館すら占拠され大人数が人質に。人質からは逃れたものの、危機にさらされた6名の大使館員を救出すべくCIAが考案した作戦は「6名を架空映画アルゴのスタッフとして偽装し、正規ルートで飛行機で出国する」という驚きのもの。

サスペンスとして到達点なのでは?というくらい上質でエンタメとして単純に楽しめるんですが、意外にもアメリカ自国への皮肉が介在している印象もありました。

国家単位でみればイランでの嫌米は完全に自業自得であり、大使館員は米国の被害者でもある。アルゴ作戦をトップダウンで中止させられそうになるシークエンスも、大統領選挙へのケアだったんじゃない?という匂わせも。んで、結果出せば勲章を与えるという、手のひら返しのお間抜けっぷり。

右傾化アジテートの恐れもある題材において、非常に優れたバランス感覚だなーと思わされます。イラン人のカナダ大使邸のメイドも、わかってて助けてくれましたもんね。個人のイデオロギーを国家でくくるなよ!といったメッセージも感じました。

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・ベン・アフレックって『AIR』もよかったし、こんなに製作面でも優れてたんですね。というかそもそも『グッド・ウィル・ハンティング』のときからか。そして『AIR』も結末がわかってるけどハラハラする作品だ。イーストウッドみたいになっていくのかなあ。

・チェンバースとかレスターがひたすら口が悪く「クソ食らえ」を連呼する、アメリカ人ぽいなーと思っちゃうノリ。最近のアメリカ映画ってそういうの割と減ってる気がして懐かしさすら感じたんですが、70年代が舞台だからそうなってるわけであり、もしかしたらいまやこれ系は不適切表現と化してるのかなあとか想像しました。めっちゃ余談。
金宮さん

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