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金融腐蝕列島 〔呪縛〕のOmizuのレビュー・感想・評価

金融腐蝕列島 〔呪縛〕(1999年製作の映画)
3.7
【1999年キネマ旬報日本映画ベストテン 第2位】
『日本の一番長い日』原田眞人監督が高杉良の小説を映画化した作品。厳密には高杉良の『金融腐蝕列島』シリーズ2作目を映画化している。役所広司、仲代達矢、椎名桔平、風吹ジュンなど豪華キャストが出演している。

普通に面白かったが、若村麻由美演じる外資系メディアのアンカーはとってつけたような印象があり蛇足な気がする。

金融用語が滝のように流れてくるので頭がエンストしそうだった。腐った金融機関、その内部と外部の闘いをスリリングに描いている。仲代達矢がドンとして立ちはだかってくるわけだが、その存在感は凄い。本気で怖い。

銀行、検察、メディアなど各方面から日本の金融について語られていく。原田眞人監督のスピーディーな演出がいい。銀行内部のミドルエイジ4人組が奮闘するのだが、そこもキレイな話にせず複雑な立場の取引を上手く描いていると思う。

劇中ではACBという名称になっている銀行、その腐った内部構造が空間を上手く生かして演出されている。スピーディーな会話バトルは緊張感がある。「出世は望めないな」「捨て石の覚悟で」などミドルエイジたちの間で交わされる会話がアツい。

若村麻由美演じるフェミニストの外資系アンカーは原作にはないらしい。それ自体はいいと思うのだが、「時代の流れなので入れておきました」という以上でも以下でもない描写になっていて残念。

確かに男たちが中心の話ではあり、その闘いはアツいのだが、女性のキャリア職もいるしもたいまさこ演じる弁護士もいる。フェミニズム的テーマを扱うにしてはそこの掘り下げが浅すぎる。やるならちゃんとやらないと。

原田眞人の中でも取り立てて素晴らしい訳ではないが、それなりに緊張感があって面白い作品だと思う。色々付け足した部分が残念なので、もっと直球でやったらよりよくなったと思う。秀作だが残念な部分も目につく作品。
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