継

アルファヴィルの継のレビュー・感想・評価

アルファヴィル(1965年製作の映画)
3.5
地球から遠く離れた星雲都市アルファヴィルへ派遣された潜入捜査官レミー・コーション(コンスタンティーヌ)。
消息を絶った捜査官アンリの捜索とアルファヴィルの創設者フォン・ブラウン教授の逮捕を任務とする彼は, 自身を新聞記者と偽り捜査を開始するのだが。。


今で言うスーパーコンピューターの演算速度と, 自律型AI(人工知能)の能力を併せ持つようなコンピュータ「α60」によって管理・統制された社会アルファヴィル。
人々は肌に刻印された個人番号で登録/管理され, 思考や恋愛, 感情の昂(たかぶ)りは「統制」への反逆に繋がる罪とみなされて罰せられるー。

劇中, α60の設計思想を “中国の支配体制を参考にした” みたいにあっけらかんと言っていて, 今のタイミングで観ると記者を装う主人公の新聞社が「りんご日報」にしか思えなくなるというww, ’65年仏製モノクロ.

🍎☂

映画のベクトルが容易に社会派へ向きそうな題材をゴダールは良しとせず,「恋するってどういうこと?」とアンナ・カリーナにひとこと言わせて強引にSF冒険モノへグイッ!っとハンドル切ったような作品。

後年に同じくパリを “未来都市” とした『華氏451』の, 生真面目なトリュフォーとの行き方の違いが面白くて, “E=mc²” とデザインされたネオン管や色んな引用とか, 懲罰省のプールで “ショー” と銘打って執行される死刑のシュールさとか, 独特なセンス・バランス感覚が他には無い魅力に思える作品です。

α60は自動生成された声色で指令を出したりするのだけれど, バリトン〜バスの低音ボイスでヴィブラートの効いた仏語のそれは威圧感がありながらも無機質で機械的な冷たさを有していて雰囲気たっぷり。

スティーヴ・エリクソンという作家が「ゼロヴィル」という小説を書いてて, このタイトルは「ここはアルファヴィルじゃない, ゼロヴィルだ!」という本作の台詞から来てるんだけれど,
α60ばりに, 自律型AIを搭載したドローンが人間の承認無しに敵を攻撃する昨今, 上述の主人公の台詞は今や世界中いたる所で聞こえるようです。
現実は半世紀以上を経て本作に追い付いてしまいましたネ。。

元気です.ありがとう.どうぞ…
継