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泥棒貴族のbeachboss114のレビュー・感想・評価

泥棒貴族(1966年製作の映画)
5.0
同年公開オードリー・ヘプバーンの『おしゃれ泥棒』の陰に隠れて損をしている傑作。

騒がしくないのにスリリングなケイパーもの。原題が「ギャンビット」というだけあって、チェスのような紳士的な駆け引きが魅力。まぁ、古き佳き時代の映画のあくせくしない余裕とでも言おうか。

盗む側が自信過剰なヒヨッコで隙と穴だらけのプランで挑むのに対して、盗まれる側の方が遥かに理知的で器も大きく、ゲームを楽しんでいる様子に引き込まれてしまう。

ちなみに、オチのトリックは、100年前のモナリザ盗難事件のもの(セイモア・V・ライトのノンフィクション「モナリザが盗まれた日」に詳しい)。

冒頭からじっくり30分かけて「え? まだ話、始まってなかったの?」な展開が意表過ぎて斬新。その間、石みたいに一言も喋らせてもらえない主演女優の扱いも、これまた斬新。

クライマックスでようやく起用の意図が分かったシャーリー・マクレーン。体の柔らかさはミュージカル女優の面目躍如。チャイナドレスから小川真由美スタイルまで七変化なファッションは、有名デザイナーの最新カタログに陥らず、別の意味で「おしゃれ泥棒」。

盗みのテクニックも、無駄にイチャイチャしない展開もスマート。とはいえ最後の最後は、銭形警部曰く「とんでもないもの」を盗んで終わるのがお約束。


【追記】
劇伴がどこか「アラビアのロレンス」に似ていると思ってたら、モーリス・ジャールだった。
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