ミシンそば

麦の穂をゆらす風のミシンそばのレビュー・感想・評価

麦の穂をゆらす風(2006年製作の映画)
3.6
「信頼は武力で取り戻せる」、「我々を暴力で抑圧するなら我々も暴力で抵抗する」
作中のセリフだが最悪が過ぎると素直に思う。
キレイごとが罷り通らない時代背景ではあったし、最悪ではあっても人の本質がただただ横たわっている。

IRAは二昔前ほどの単純なアクション映画とかでは、テロリストに過ぎない立ち位置の悪役と言うイメージだったが、そんな風になる、思想が無数に枝分かれして複雑化する理由には、人間の本質である“憎悪(を抱く)”がある。
最近様々な別作品を触れて解像度を上げたからこそ見えてきた(だが、すぐに見れているべきだった)視点な気がする。
苦手な意識があるケン・ローチは、それに寄り添う姿勢は見せつつも、作中でこれから先起きること、すでに起きたことこと、(そして当然未来のこと)までには寄り添わず、ある種いつも通りな淡々とした語り口調で突き付けてくる。

見応えのある作品だったし、昨今の国際情勢を鑑みれば悲劇と憎悪に満ちた重たい作品でもあったが、その淡白さゆえ不思議と観終わる頃には喉奥の引っ掛かりが消えている。