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灰とダイヤモンドのBOBのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
3.7
アンジェイ・ワイダ監督による"抵抗三部作"の第3作。

1945年5月8日。ドイツ降伏後、ソビエト共産党支配下のポーランド。ポーランド亡命政府からソビエトの要人暗殺を依頼された若い男が、誤って別人を殺してしまう。

「持てるものは失わるべきさだめにあるを。残るはただ灰と嵐のごとき深淵に落ちゆく昏迷のみなるを。永遠の勝利の暁に灰の底深く、燦然たるダイヤモンドの残らんことを・・・」

"無意味な"殺しに始まり、孤独な死で終わった。ただただ殺し合いの虚しさだけが残った。永遠の自由を勝ち取るための戦いの終わりは一向に見えない。

戦後混乱期のポーランド。国中が戦争終結の歓喜に湧く中、良心の呵責に苛まれながらも暗殺の任務に追われる孤独な主人公。活気溢れる新生ポーランドと、燃え尽きて消えゆく男の対比があまりにも残酷だった。偶然出会った女性との恋をきっかけに、殺し合いの世界から足を洗い、新しい世界でやり直したい、人並みの幸せを掴みたいと、将来への希望を抱くも、それは儚い夢と消える。

若い男女(灰とダイヤモンド)が一緒に過ごす最初で最後の一晩。逆さのキリストが二人の将来を暗示していた。ラストは、時間の不可逆性を象徴する列車が過ぎ去っていった。

"上官の命令は絶対"という軍隊システムの理不尽さがあった。戦争に翻弄される若者たちの悲劇という点は、『仁義なき戦い 広島死闘篇』を想わせた。

主人公がかけている薄い色のサングラスがアイコニックなアイテムで、ヤンチャ感、チンピラ感を演出していた。

人が死に、盛大に花火が上がるという皮肉な画。デ・パルマの『ミッドナイトクロス』っぽい🎆?

「クソ野郎ほど浮かぶ世の中だ」

「人生は紙クズ同然さ」

455
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