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がめつい奴のsayuriasamaのレビュー・感想・評価

がめつい奴(1960年製作の映画)
4.0
しぶとく生きるドヤ街のバイタリティ
と、きらめく東宝スター軍団

ストーリーは大阪・釜ヶ崎のドヤ街で簡易宿泊所を経営しているお婆さん(三益愛子)と息子(高島忠夫)、彼女に可愛がられている戦災孤児(中山千夏)、そして宿に長期滞在する人々の群像劇。ロングラン舞台の映画化。

登場するキャラクターほとんど全員欲深いがめつい奴らなのだが、三益愛子&高島忠夫ら親子は輪をかけてがめつい(気がする。)三益愛子迫真のお婆さん演技は言うまでもなくいやらしくまた、たくましい。高島忠夫の胡散臭さ、ハマってる。そして、この宿の住人たちもみんな訳アリで、草笛光子&団令子の元地主の娘たち。この二人の対立も興味深く、ロシア人のハーフで(当時を強調するならばあいの子)ささやかな野望のある安西郷子、そして森雅之の汚れ役!あんなに汚れた森雅之は意外すぎた。そして中山千夏に一杯食わされる森繁も安定な存在感。

似たような場所で繰り広げられる、川島雄三作品の『貸間あり』と比べて、千葉泰樹監督&藤本プロデュースのせいか、欲望渦巻く暗黒下町のパワフルさは少しあっさりしているが、舞台作品を元にしたことを思わせるカメラアングルや、群像劇でも飽きさせず、さっぱりとした味わいに仕上げた千葉監督らしさも感じる名作。

それにしても、1960年前後の東宝作品は平均的なクオリティが高いなぁ。その上、こんなある意味下品の極みのようなストーリーでも、出てくる俳優陣の豪華なこと。オールスター作品に近い布陣でも、あの人いないなぁ〜とか考えてしまう俳優陣の厚み。
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