マヒロ

シャインのマヒロのレビュー・感想・評価

シャイン(1996年製作の映画)
3.0
音楽家の父の元に産まれ小さい頃からピアノの才能を見せていたが、父との確執などから精神的に不安定になっていったデヴィッド・ヘルフゴット(ジェフリー・ラッシュ)の半生を描いたお話。

少年期、青年期、そして現在と三つの世代に分けてデヴィッドの人生の浮き沈みを描いていく。特に取り沙汰されるのは父のピーターとの関係で、デヴィッドの才能に期待しつつも、留学の話を無理やり揉み消したりと、どこか嫉妬しているかのような素振りも見せる歪んだ感情が怖い。ピアノの先生に難しすぎると言われても頑なにラフマニノフの曲を演奏させようとしていたのも、才能を信じていたというより無理難題を押し付けて潰そうとしていたのでは……と勘繰ってしまった。

アカデミー賞も獲ったジェフリー・ラッシュはもちろん、青年期を演じたノア・テイラーのジワジワ精神を蝕まれていくような繊細な演技も素晴らしく、デヴィッドという複雑な人生を歩んできた人を上手く表現していたと思う。

ちょっと気になったのは、全体的にサラッと流されてしまうようなシーンが多いところで、例えばデヴィッドの精神を決定的に追い詰めるラフマニノフの演奏だが、何故そこまでその曲が彼を追い詰めたのか?というところがよく分からない。難易度がべらぼうに高いということは語られるが、それだけで精神崩壊してしまうというのはちょっと強引な気もするし、ピアノ素人にも分かるように曲のヤバさを説明してくれたら嬉しかった。
大人時代になっても駆け足な感じは否めず、ただその人生をなぞっているだけに感じてしまったし、三つの時代の話を描くにはちょっと上映時間がコンパクトすぎたのかなという気がした。伝記映画って、その人の人生に厚みがあればあるほど映画の時間内では語りきれないことが多くなるし、結構難しいジャンルなのかも。

(2023.44)
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