マヒロ

穴のマヒロのレビュー・感想・評価

(1960年製作の映画)
4.0
(2024.41)
フランスの刑務所で、若者のガスパールが部屋を移動させられる。リーダーのマニュ、寡黙でマッチョなロラン、やる気なさげなジョー、“お坊様”というあだ名で呼ばれるお調子者のボスランの四人が収監されたその部屋では、脱獄経験者であるロラン主導のもとで脱獄計画が進められており、誠実なガスパールは信用され仲間に加えられる……というお話。

コンクリートの床に穴を開け、地下室から下水道を通じて脱獄を試みる様子を淡々と描いていく。『抵抗』とか『アルカトラズからの脱出』なんかを彷彿とさせる硬派な脱獄ものだが、五人で協力しあって計画を進めていくというところが大きな特徴。人間ドラマ……というほど何か劇的なことが起こるわけではないが、タイプの全く違う男達の掛け合いはそれだけでも楽しく、ベタベタし過ぎないドライな関係性が心地良かった。
コンクリートを破壊するために作られるベッドの脚を使った即席のハンマーに始まり、看守の動きを覗き窓から探るための棒付き鏡、地下での作業中に時間を測るための砂時計など、お手製の脱獄グッズが次々と出来上がっていくのも面白かった。

主人公は最初に出てくるガスパールかと思っていたが、実質脱獄のリーダーであるロランがメインで描かれる。言葉少なだが確実に脱獄を進めていく姿は仕事人という感じで格好良いし、独特の風貌もなかなか存在感があるが、ロランを演じた人は本職俳優ではなく、なんとこの映画の元になった実際の脱獄事件に関わっていた人であるというから驚き。そういえば本人が冒頭で「友人のジャック・ベッケルが私の話を映画化してくれました〜」みたいな感じで語っていたが、何故か観ている最中顔が結び付かなくて気付かなかった。曲がりなりにも犯罪者である人を普通に主人公格で映画に出してしまうというあたり、この時代の大らかさが感じられて良いね。
マヒロ

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