ゴマシオ

アヴェティックのゴマシオのレビュー・感想・評価

アヴェティック(1993年製作の映画)
5.0
確か渋谷のユーロスペースで拝見。

ドイツ人の超心理学の研究者と、
その研究に協力するクルド人の政治亡命者の摩訶不思議な交流と、
政治亡命者というマージナルな者として、何処にも属さない悲哀と喪失感を持つ彼の不思議な半生を、映画の大まかな筋として、とても幻想的な美しい映像で表現されたゴシックな映画。

本筋の中では、特に大きな意味を持つシーンでは無いのだが、忘れられない場面がある。

クルド人の村でのトルコ軍の虐殺を、白黒の映像で、BGM、及び音響効果をほぼ排した淡々とした演出で表している場面。
馬上の兵士が、土中に首まで埋められたクルドの男達を、ギャロップで踏み潰していく。

その単純作業に似た行為を、感情を抜きにした記録として撮影している程で、そのお陰で、花壇に発生したアブラ虫に殺虫剤を噴霧するが如くの、何の慈悲も持たない民族浄化の狂気がより際立つシーンだ。

あのポスターにもなった耽美なシーンや、岩山での舞踏のシーン、ドイツ人研究者に超催眠をかけるシーンよりも、心に残ってしまった。
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