amin

ソイレント・グリーンのaminのレビュー・感想・評価

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
3.7
念願叶って、ようやく観ることが出来た。辛抱強くスクリーンに掛かるのを待っていて良かった。火曜日のソイレント・グリーンの配給に並ぶ群衆と、暴動、そこへシャベルの付いた装甲車型の収集車が突っ込んでいくシーンは、言わずもがな、この映画の一番盛り上がるシーンである。
もう一つ、個人的に素晴らしかったのは、牛肉を手に入れたチャールトン・ヘンストンが、エドワード・G・ロビンソンと「最後の晩餐」を楽しむシーンである。この映画は、エドワード・G・ロビンソンの遺作となっているから、本当の意味でも、最後の晩餐となってしまった訳で。このシーンの白眉が、一度もセリフで「美味しい」と言わないところである。初めて食べるヘンストンと、昔の味を回想しながら味わうロビンソン、ちょっと感動してしまう。
2022年、ディストピア世界の映画であるが、幸いにも現実の2024年では、ソイレント・グリーン以外の食べ物を口にして生きている。けれど、ホントのところ何を食べているか分かったもんじゃないし、世界的には人口は増えるばかりである。

警官役のチャールトン・ヘンストンは、法なんか無視して、バンバン撃つし、民間人も巻き込んで殺し合いをするし、事件関係者の女性ともなんか関係持っちゃうし、事件は追う癖に、その辺の倫理観は曖昧だな、と思った。
が、しかし、約30年後、全米ライフル協会の会長となっているヘンストンは、マイケル・ムーアに直撃インタビューをされて、映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』で悪の親玉みたいな人物として銀幕に晒されることになる。『ボウリング・フォー・コロンバイン』は2003年のアカデミー賞、長編ドキュメンタリー映画賞を受賞する映画で、僕が最初に観たヘンストンはこれである。
『ソイレント・グリーン』の中でディストピアを嘆いたヘンストンが、その後、銃社会のアメリカのオピニオン・リーダーになってしまったのは悲しい。そのヘンストンも2008年に亡くなっていて、何もかも昔の話である。残されたのは、今生きているこのディストピアだけである。
amin

amin