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死の砂塵のaminのレビュー・感想・評価

死の砂塵(1951年製作の映画)
3.3
牛泥棒を縛り首で私刑にすると言えば、名作『牛泥棒』を真っ先に思い出し、テンションが上がる。連行する保安官だけが善良で、あとは悪い奴ばっかりという設定はとても良かった。嫌いな歌を歌い続けるという「攻撃」はなかなか効果的な気がした。実際、観ながら観客もあの歌にうんざりしてくる。そして映画の中でもツッコミを入れていたけど、カラカラの砂漠で大声で歌っても声が涸れないのが不思議になる。この辺から、この映画において砂漠はあまり過酷ではない感じがして来てしまう。タイトルは忘れたが、つげ義春の短編で砂漠で救助が来なくて困るのがあったし(『蟻地獄』だったかな)、『masterキートン』の一巻『砂漠のカーリマン』でも、いかに砂漠が過酷かを描いていて、読んで知識として知っているので、リアリティがなく、映画への求心力を失ってしまう。
裁判のシーンで、保安官が何故か女への想いを打ち明けるが、アレも完全に要らない。あれは無くてもその後に繋がるし、ラストはみんなで帰るではなく、『捜索者』のジョン・ウェインみたいに独り去っていく方が絶対に良い。人を裁くのは司法であると言いながら、真犯人を後ろから撃ち殺すのも、これまで貫いて来た信念はなんだったんだろうと、まさに後ろから撃たれたような気持ちになった。という感じで、良いシーンと設定がある分、もったいないところの目立つ映画だった。
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