マインド亀

ソイレント・グリーンのマインド亀のレビュー・感想・評価

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
5.0
🟩🟩🟩🟩🟩人口増加が招いた2022年のレトロ・ディストピア世界!🟩🟩🟩🟩🟩🟩


●今度リバイバル上映されるということで、我慢できず配信で観てみましたが、何なんですかこれ!?傑作じゃないですか!?このポスターのブルドーザーで運ばれる大量の人間ゴミのビジュアルにヤラれたんですが!!だいたい同じ映像が出てくる!すげぇ!

●もしも1970年代の人口増加がそのまま続けばこの世界では人間がゴミのように扱われるのではという、今の日本の少子高齢化の状況からすると少しうらやましい気もするディストピアSF。これだけ人がゴミのように野垂れ死ぬ状況は当時のアフリカの食糧難などを参考にしていると思われます。人口が少なすぎるトゥモロー・ワールドみたいなディストピアも嫌ですが、人口が多すぎるディストピアも嫌ですね。

●で、人がモノのように扱われる代表として、高級マンションにはファニチャー(家具)と呼ばれる、備え付けの娼婦がいるわけです。彼女たちはマンションの住人によって大変裕福な暮らしができるのですが、住人が替われば捨てられる可能性もありますし、紳士的な住人であればいいですがバイオレンスな住人なら最悪ですよね。また、気に入られなければ捨てられて街のゴミのように扱われるわけで、彼女たちも決して安全な人生ではないわけです。
また、刑事にはブック(本)と言われる、字の読める博学な前世代の老人がバディとして組まれています。本作の主人公のソーンとブックのソルとのバディ感も素晴らしい。というかまるで夫婦のような関係で、くすねてきた食料をちゃんとソルに分けてあげるんですが、「昔はこんな食べ物がちゃんとあったんだぞ!」と泣きながら牛肉のスープを一口一口食べるソルが本当に愛おしい。そりゃ守ってやりたくなりますよね。本当にいいシーン。また、いちごジャムのついたスプーンをくすねてポッケから取り出し、「舐めてみろ」と言って舐めさすシーンもめちゃくちゃ微笑ましい。極めて人間的に扱われていますが、この世界では年寄りは「ホーム」というところに行きつかなくてはいけないのです。
こういうわけで、人の所有物となっている人間たちはまだ家があるだけマジ。ずっと屋外で寝そべり、果に野垂れ死にするのが大半の人間です。冒頭の際にブルドーザーで運ばれる姿は圧巻!まさに廃棄物扱い!

●また、当時はヒーロー感の漂う主人公の刑事ソーン役のチャールトン・ヘストンも、本作ではなかなかの悪徳刑事。ディストピアの割に刑事特権はかなり強すぎる気もしますが、平気で被害者の部屋から物品や食料をくすねたり、ファニチャーである娼婦を当たり前のように味見する、ダークなヒーロー像を体現しています。この辺もなかなかに好感触。人間臭がプンプンするんですよね。息絶えた母親のそばにいた子供を教会に連れて行く優しさと、平気で周囲の人を盾にして銃撃戦をする非情さが同居する人間の奥行きがあるキャラです。
ラストバトルは教会に雑魚寝している人々のうえで格闘。こんなん観たことないです。

●結構皆さんのレビューを読むと割と評価は低く、「流石にこの未来はなさすぎる。もっとちゃんと未来予測するべき」とか書いてる人がいますが、それは流石に無茶なことを言ってる気がしますよね。しかもそれが作品内でレトロなシューティングゲームを遊んでるだけでそんなツッコミするのもおかしいですよね。むしろ作品内の時代の2022年間の異常気象もちゃんと予測してます。あと、教会の神父さんがワンオペで対応してて目が死んでるのも、リアルな現代の医療崩壊とか教師不足のようなことを想起させますね(こじつけか?)。

●肝心のソイレント・グリーン🟩という食料ですが、これ最近似たような物が出てくる映画観たなあと思って『スノーピアサー』を思い出したんで、あれ⬛の原料何だったっけ?と思って調べたんですけど、ソイレント・グリーンとスノーピアサー、どっちが嫌かって悩みますよね(苦笑)

●とにかく、私にはこの低評価が理解できませんが、この独特の世界観は一見の価値があります。リバイバルのリマスター版を鑑賞することもアリだと思います。是非観てほしい一作です!
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