マインド亀

異人たちのマインド亀のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.5
ああ、やっぱりそっちのバランスか…いや、そうでもない!?…あれ?でもやっぱりそっちのバランスか…と感情を振り回され続ける105分

●レビューでも書きましたように、この直前に大林宣彦版の『異人たちとの夏』を観てしまったがために起こる、日本版の特異なバランスをどう調理したかが気になるばかりの105分になってしまいました…。
山田太一の原作を読んでないから、ひょっとすると原作に忠実なのかな、とも思いましたが、どうしても映画版を見比べてしまうんですよね。

●いやね、オリジナル版って自分としてはかなり面白くて、アンパン食べてたら突然中からカレーが出てきたぞ!ってな魅力があったんですよね。要は名取裕子のホラーパートなんですけども。
本作はもう少し両親のパートと、主人公の現代におけるセクシャリティにまつわる自己肯定感が中心になるのはおそらく間違いないな、とは思っていたのですが、その名取裕子のホラーパートがどういう調理をされるのか、という点においてのみすっごい気になりすぎてて、本作を純粋に感じる事ができなかったんですね…(笑)
本作は、オリジナル版よりもはっきり早い段階で両親が、自ら「異人」の存在だと認識してるんですよね。確かオリジナル版は、途中まで彼等が両親なのか、両親に良く似た存在なのかが、曖昧なままだったように記憶しています。だからこそ早い段階でこの作品は、ファンタジーなんだとわかりやすくなってるわけです。

●で、やっぱり流石というか、このチューニングはリアルだけどもファンタジックで、そして現代向けに良く出来てると思うんです。両親に自分のセクシャリティを告白することと、自己肯定感の実現、孤独に生きてきた人生の転機になる展開など、めちゃくちゃうまく出来てるし、なんならもしかすると主人公の内面の精神世界が、作り出した幻想かもしれないという無理のないチューニング。うん、良く出来てる!そうなると後半、「彼」は一体どうなってるんだろう?とずっと気になってくるわけですよ。
で、お母さんが言うわけです。「彼を大事にしてね(そばにいてあげてね。だっけか?)」。ここで私はあれ!?ってなるわけですよ。主人公の実家で、「彼」は両親の姿とガラス越しに会ってるわけなんですよね。つまりお互い「会っている」。とすれば、お互いが「異人」の存在だとわかるはずなんです。てことは母親は、「彼はあなたとは別の世界の偉人だから、深煎りしないように…」といった警告をしてもいいのかな、なんて思うんですよね。
で、ここで私は、「ひょっとすると『彼』は生者なのかな?」なんて思うんですよね。逃げたな、アンドリュー・ヘイ!なんてね。
で、ここからラストに向かって「彼」はどうなるのか!?
そんな見方をしてるのは私だけでしょうか?
変に予習してしまったがために作品の本質をどうやら見逃してるような気がします(笑)直前にオリジナル版とか見ちゃだめ…!
もっと他にレビューしようがあると思うんですけど今回はだめだ(笑)
是非是非、皆さんは純粋に楽しんでいただけたらな、とおもいます。
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