回想シーンでご飯3杯いける

大阪の宿の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

大阪の宿(1954年製作の映画)
3.2
これもamazonプライムで見付けた作品。1954年という事は終戦からもうすぐ10年というタイミング。小津映画「東京物語」とほぼ同じ時代だ。

舞台は大阪で、高度経済成長の中で会社の重役ともめ事を起こし左遷された男が主人公。左遷先の大阪にある安宿を下宿として利用し、そこで知り合った女中達と交流を深めていく様子が描かれている。

日本の経済復興を担ってきた男と、ほぼ身売りのような商売で日銭を稼いできた女中、芸者達は、社会的な立場は違えど、混沌とした社会に対する憤りという部分で同じ気持ち抱えている。宿で出入りする芸者を演じているのは昭和の名女優、乙羽信子。僕が子供だった頃に、所謂「日本の母親」的な佇まいで活躍していた記憶があるけど、この作品では若くて妖艶で、男勝りの部分を持ち合わせる。とても魅力的な役どころだ。

舞台として登場するのは大阪城、大川、曽根崎といった、大阪キタ周辺の地域。僕が住む家にも近く、約70年前の様子を見る事が出来たのは貴重な体験だった(蒸気機関車が走ってる!)。本来はモノクロ作品のはずだが、amazonプライムで配信されているのは何故か色がついている。