アキラナウェイ

西部戦線異状なしのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
4.2
リメイク版が大変良かったので、1930年公開のオリジナル版を。

原作が発表された翌年に公開された本作。93年も前の作品とはいえ、そのクオリティは目を見張るものがある。第3回アカデミー賞最優秀作品賞、及び最優秀監督賞を受賞という実績にも納得。

第一次世界大戦のさなか、ドイツのとある学校で、愛国心を説く老教師の言葉に感化された 17歳のポール(リュー・エアーズ)と同級生のフランツ、ムラー、アルバート、ベームらはドイツ帝国陸軍に入隊。しかし西部戦線の塹壕戦の激しさに、彼らは自分達の認識が甘かった事を知る—— 。

既にリメイク版を鑑賞している為、本作が如何に戦争の過酷さを伝え、重いものなのかもわかっていたが、意外にも序盤は楽しげなシーンが多い。

元郵便屋の上官を夜中待ち伏せして袋叩きにしたり、敬語を使わずナメた態度を取ったり、およそ戦時下とは思えないようなシーンも。

しかし、敵軍の銃砲撃の中、いちばん気弱なベームが無惨な死を遂げ、クラスメイトが1人、また1人と戦死していく現実。

いくら後悔しても後戻りは出来ない。

以下、ネタバレを含む為行間を空けます。











印象的だったのは、敵の銃撃で負傷したポールが休暇を貰い帰郷するシーン。相変わらず戦争を讃え、若者の愛国心を扇動する老教師。自分を英雄視し、羨望の眼差しを向ける生徒達。もはや故郷にすら、自分の居場所はないのだ。

このプロットはリメイク版にはなかった筈で、原作に忠実なのはこちら。ラストシーンも然り。長雨の後の晴れた日。ハーモニカの音すら聴こえる、珍しく静かな戦場。何処からか飛んできた美しき蝶に手を伸ばしたポールの最期に言葉を失う。

映画史に残る名シーンとも言える幕引き。

オリジナル、リメイク共にそれぞれの良さがあると思うし、見比べてみるのも一興。しかし、どちらにせよ観終わった後の虚しさは同じ。

儚く散っていった命。いつだって犠牲になるのは年端もいかない若者達だ。

憲法改悪により、日本を戦争へと向かわせようとする自民党。台北での講演で戦争回避の為に「戦う覚悟を」と説いた自民・麻生副総裁。

いやいや。
なら、お前が最前線に立てよ。

どうか、あの過ちを繰り返さないように。そう願わずにはいられない。