革芸之介

木と市長と文化会館/または七つの偶然の革芸之介のレビュー・感想・評価

4.0
エリック・ロメールの熟練した技が光るフランス流の喜劇。

田舎の市長が文化会館建設を計画するが、そこに文化会館建設の反対を表明する環境保護派の小学校教師や政治雑誌の女性ジャーナリストがからみ、ロメール映画なので、当たり前のように皆よく喋る。

序盤から市長のパスカル・グレゴリーと恋人の小説家アリエル・ドンバールが田舎の道をひたすら歩きながら話し続ける。もう二人の「歩行」と「会話」だけで映画を成立させてしまうエリック・ロメールの達人技。

もちろん教師役のロメール映画の常連ファブリス・ルキーニも負けずによく話す。文化会館建設反対と市長批判を身振り手振りをまじえて話し続ける。話すだけではない。動き続ける。キャメラはひたすらパンを繰り返し被写体のファブリス・ルキーニの左右の横移動を映し続ける。

市長の娘の蹴ったボールが画面からフレームアウトする。そのボールが、自転車を押しながら道を歩く教師の娘ゾエのところにフレームインして、市長の娘と教師の娘のゾエが出会うシーンの素晴らしさはロメール映画のマジック。

教師の娘ゾエ(10歳)と市長パスカル・グレゴリーが対峙して政治的意見を交わすシーンも凄いカッコいい。

もう、みんなよく話し、討論して、挙句の果てはみんな歌いだしちゃう。エリック・ロメール映画はこれで良い。
革芸之介

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