ダンクシー

マッチ工場の少女のダンクシーのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
3.7
基本無表情で、セリフがほとんどない。フィンランド行きてぇぇぇ。
重要なセリフは薬局での、「効き目はどう?」「イチコロ」だけ。

内容は容赦なくてとても残酷なんだけど、どこかおかしくて滑稽なブラックユーモアが満載。いかにもなカウリスマキらしさだ。復讐劇は、普通はサスペンスになったり不気味になったりするのに、そうはならず冷たさを保ったままどこかシュールに描かれているのが特徴的。独特に不幸を描いている。セリフなんかいらねぇよな…説明的なセリフで感情を表現する必要なんてないのさ!!

着々と進んでいくストーリーの中で、
部屋に置かれたジュークボックス、ディスコに行った時のイリスの服のダサさ、一夜の遊び相手に惚れてしまったり計2回しか会ってない男をいきなり親に紹介するおかしさ、イリスの兄が作った食事のなんとも言えぬお粗末さ、そして曲のチョイス、といったシュールポイントが散りばめられている。

ラストシーンの挿入歌だって、ナンジャコリャって感じですよ。"君の凍った眼と冷笑が凍らせた 愛の花ももう輝きはしない ひどい人 愛の夢をこわして踏みにじる 愛の花ももう咲きはしない 君の凍った眼と冷笑が枯らした ああ ひどい人だよ 愛の夢を踏みにじる~♪"…って、まあそりゃこの作品での選曲は全部場面とリンクしてるからこれはイリスを不幸にした周りの人達を歌ったような歌詞なんだけど、大クセがすぎる!!絶妙なダサさを突いてくるよな〜。

マッチ工場で働いているイリス。見た目からいかにも不幸そうだが、仕事から家に帰っても何も無い。自分に冷たく厳しい両親がいるだけ。男とも縁がない。序盤はずっとセリフがない。そして、初めて出てくる会話が、イリスが給料でドレスを買った事がバレて父と母に罵られるセリフだ。「売春婦め!」「返品してきな」だ。
そして、ディスコに勝負服のドレスで訪れるイリス。当然、体目当ての性欲男にひっ捕まり、行為が終われば用済み、愛されない。しまいには妊娠する始末。そして、その事を手紙を書いて男(アールネ)に直接渡す。しかし、アールネから帰ってきた返事は「始末しろ(=堕ろせ)」だ。あまりにも惨いストーリーやねぇ、可哀想に。

終盤、毒薬を調合していましたが…もうどうにでもなれってイリスの気持ちがひしひしと伝わってきた。本当に、カウリスマキの作品の中でも1番救いのない容赦ない話だったと思う。いや、絶対そう。でも、それなのに、ラストはハッピーエンドのように感じてしまった。むしろ、良かったのではないのか?と。それは恐らく、イリスが自分の力でコトを成し遂げたからだろう…。
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