ダンクシー

勝手にしやがれのダンクシーのレビュー・感想・評価

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)
3.8
「もしあんたが海が嫌いで山も嫌いなら そして街も嫌いなら勝手にしやがれ!」

世界で初めてジャンプカット技法を編み出したジャン・リュック・ゴダール。彼の作品を観るのはこれが初めてなのですが、圧巻すぎた…。映画史に革命を起こした彼の作品を観た当時の人たちの衝撃がどれほど大きかったか分かる。
どのジャンプカットも自然で、気持ちいいリズムで繋げていた。カメラワークもハイレベル・ハイセンス。2人のやりとりも最早演技には見えなかった。本物の会話かのように感じた。

「密告はよくない」
「それが世の中さ。密告者は密告し強盗は盗む。人殺しは殺し恋人たちは愛し合う」

確かに前後関係が多少雑だったり脈略がなかったりするのだが、画の力があまりにも強すぎる。これは、どの場面を切り取っても様になっているという意味。一つ一つのシーンが美しくてまるで名画のようだった。詩的な美しいセリフが多く続くのですが、正直会話内容はあまり覚えていない。ただ、情景があまりにも綺麗すぎてすぐに浮かぶ。ベッドの場面とか風呂場の場面とか。セリフも、ほとんど男が女を口説くやりとりだし。逃亡生活中に一人の女を執拗に口説くストーリーと要約も出来てしまうくらいだ。
パトリシアは、髪が短いのに女性らしくて可愛いし、ミシェルも男前で、ファッションから何から全てがオシャレでスタイリッシュ。だから観ていられたし引き込まれた。
まぁ今でこそ、こういう映画を撮ったらダサすぎるしどうしてもクサくなっちゃうんだろうけど…笑

理屈自体はあまり分からなかったし本人らもフィーリングの範疇でしかなかったんだろうけど、こういう末路の作品って、クライム作品にはありがちだよね(当然です、面白いし作品としての美が高まるので)。"カリートの道"とか、"パブリック・エネミーズ"とかね。そういう意味では色々と先駆けの作品という訳です。


"最低"という言葉が突き刺さる映画ですねぇ。。
ダンクシー

ダンクシー