ジェルボール

タレンタイム〜優しい歌のジェルボールのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.3
観終えて喫煙所に向かううちに日常のトーンに戻っていったが、まったく予定外に涙ぐんでしまった。この日はこんなにガラガラなのってのもあって、余計に無防備だったのもあるけど、うたと演奏のシーン全般。個人的には気持ちの陰りを感じさせるような、一時の転調に弱いらしい。

合間合間で月の光、それにゴルトベルクなんかも流れ、一見ノーブルなようで眠気にもつながりそうなものだが、微塵も眠くはならなかった。一方にマレーシアの文化的背景である言語の多様さがあって、のみならず、手話や表情など言外のコミュニケーション、それにオナラなんかもあるからなのか。

サムネの耳が不自由な彼と、ピアノを弾きうたう彼女を主軸に観ていたこともあり、投げっぱなしのようなラストがやや気になったが、タレンタイム=演奏会の二胡の演奏にとどめをさす、全体の不幸や悲しみに寄り添う演出に心を動かされた。