豚肉丸

アワーミュージックの豚肉丸のレビュー・感想・評価

アワーミュージック(2004年製作の映画)
4.8
女子学生がイスラエル/パレスチナの非対称性を映画のイメージと重ね合わせた講義を聴きに行くお話

大傑作!
中期ゴダールに見られた脈々の無い会話や意図不明の行動などの描写が無くなってかなりストレートな劇映画と化した印象。会話と映像でこの世界が抱える問題について切り込んで論じるような内容のためこれまで以上に難解ではあるものの、意見も映画の作りも随分ストレートになっているため、まさにこの題材を扱ってこのメッセージを発するための気力が伝わってきてとても良い。

第一部で現実の死とフィクションの死の映像をコラージュさせたドキュメンタリーが流れた後に第二部で劇映画に移る。第二部で語られるパレスチナ問題はまさに現在に通じる問いかけになっていて驚いた。「ユダヤ人」という被害者性について論じるために提示される切り返しの例。アメリカ人/インディアン、戦争の勝者/敗者の構図を提示することによって、これまで歴史上で無視され殺されてきた声を上げられなかった被害者に目を向けようとする試みが凄すぎる。
会話を全て拾えた訳でなければパレスチナ問題の背景について理解している訳でもないため全てを咀嚼できてはいないものの、それでもアクチュアルな問題の視座としてかなり重要になりそう。

そしてラストで提示される天国の画がただただ素晴らしい。横スクロール画面のように登場人物が歩く姿を横で流れるように追いかけ、周辺で様々な人物の動作が映されるあのショットが最高。「天国」を表した最高のショットかもしれない。
面白かった!
豚肉丸

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