ぽん

戦争と平和のぽんのレビュー・感想・評価

戦争と平和(1956年製作の映画)
3.6
なにせ原作がものすごい長編なので、よく1本の映画に収めたなというところ。208分と長いけどそれでも駆け足かつ舌足らずになってしまうのは致し方ない。

恋愛パートは入れ代わり立ち代わりって感じで、それぞれの恋のお相手が変わるのは原作通りなのだけど、エピソードをチョンチョンとつまみ取ってギュッと固めてあるだけなので(そうするしかないでしょうね)、観てる側としてはギョッとしますわな。ナターシャ(オードリー・ヘプバーン)なんか尻軽女のように見えちゃって気落ちする。

一方で戦争パートは映像表現が生きて、むしろこっちの方がエモーショナルだった。敵の歩兵団がザッザッと丘陵を登って迫ってくる場面など、白兵戦の恐怖をリアルに味わった。「知って理解しなきゃ憎むこともできない」と平和主義のピエール(ヘンリー・フォンダ)が戦場に来て実際に体験したガチの戦争を、自分自身も垣間見ることが出来た。

楽天的で博愛精神に富んだロストフ家が好き。お父さんもお母さんも愛情深くて穏やかで。そんな両親のもとに生まれたニコライもナターシャも真っ直ぐな心根の人物で好ましい。2人とも面食いじゃないし。(そこ?)
一家が夜中に橇にのって田舎に繰り出すシーンが、この上もなく幸福感に満ち溢れていて良いのです。シャンシャンと鈴の音が鳴り響く2台の橇から、ニコライとピエールが途中で飛び降りて、互いに意中の人が乗ってる方に乗り移る。絵的にも心情的にもエモーションが交錯する素敵な場面。もうちょっと華やかに演出してほしかったなぁと思ったりも。苦笑

ナポレオンのロシア遠征の顛末が概観できるので(ここは史実を下敷きにしている)、歴史に興味がある人はさらに楽しめると思うし、トルストイの名作をダイジェストで把握できちゃう「200分de名著」と思えば、一見の価値アリですよ。
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