『雨月物語』でどえりゃー衝撃を受けて、溝口健二をもっと観せてくれ!ゆうことで早速二作品目。
…これもいいなあ。
オープニング、ああいう感じの曲をなんて呼ぶのか分からないけど、ノスタルジックな気分の陽気な曲でごきげんにスタート。と思ったらゆっくりの横スクロールで早速「お!」っとなる。グッと引き込まれる。
競りの威勢のいい声がかぶってたからか、冒頭ちょっと台詞が聞き取り辛かったけどそれも慣れてくる。妹役の山田五十鈴なんて結構な早口でまくし立てるのにちゃんと聞き取れるし入ってくる。何よりすごいと思ったのは、『雨月物語』の時も感じたけど、所作も交えての人物同士の会話がリズムとか間も含めてものすごく自然で、芝居臭さを感じないこと。台詞がちゃんと入ってくるのにリアリティがあるのは、完璧主義と言われる溝口健二監督による徹底された演出の賜物なんだろうなと。
京都の芸妓の生活感というか、当時芸妓がどんな存在だったのかというのもよく伝わってくるし、京都の街並みの味わい深さも感じられる。登場人物もそこまで多くなくストーリーもシンプルですっきりまとまっている。
芸妓の姉妹の不遇さは現代にまで続く男女格差の視点で語ることが出来るだろうし、性格や倫理観の違いも男女問わず現代にそのまま通ずるところがある。今となっては妹のおもちゃに共感し、実際にそう思って生きてる人の方が多いだろう。そういう普遍的な、世間や社会に対してのやるせなさみたいなものも切実に描き出されている。
おもちゃがしっぺ返しをくらったというあたりで、もしかしてこのまま道徳的な着地になっちゃうのかなーと思ってたら…!まさかあんな終わり方だとは…画面に「終」の文字が出ると同時に思わず驚きの声を出してしまう秀逸な終わり方。ラストがかなり良かったのでスコア+0.2!
フィルムの一部が消失して、公開当時のものよりもいささか短くなっているらしい…
完全なものがもう観れないとなると逆にものすごく観たくなるのは人間の性だけど、これだけでも十分面白い作品だった。