藻尾井逞育

花蓮の夏の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

花蓮の夏(2006年製作の映画)
4.5
「隠し事をするなって?わかった。それなら教えてくれ。秘密を知ったあとも、友達でいられるのか?友達としてだけじゃなく、お前が好きだ」
「お前は一番の親友だ」

落ちつきのない問題児ショウヘンの面倒を見てきた優等生のジェンシン。小学校の頃からの幼なじみで今は高校に通う2人の前に、転校生のホイジャがやってくる。周囲に上手くなじめないでいたホイジャは、心優しいジェンシンに惹かれていくが、ある時、ジェンシンが密かに抱くショウヘンへの想いを知ってしまう。一方、ショウヘンはホイジャへの恋心を募らせ……。

説明的なセリフは極力排して、青みがかった引きの映像とピアノを基調とする音楽で主人公の心情を表現する手法は見事です。台湾BL系映画の傑作として評価の高い本作ですが、それだけに決めつけてしまうのは実にもったいない。青春映画としても素晴らしい作品です。後から振り返れば輝かしい青春時代ではあっても、友情や恋愛のウェイトが高く、その真っ只中では傷つき傷つけ合い、喜びも悲しみも思い悩むことも多いですよね。特に相手を好きになる気持ちの形が違ってしまうと、友達なら何でも話し合い隠し事するなって言われても、相手に自分の気持ちを伝えることで今ある関係まで失ってしまうことを恐れて何もできなくなってしまう。
最後のシーン、親友という立場をあえて捨てて告白したのに決して親友以上にはなれないという悲しい終わり方と解釈する人もいますが、ここは愛の形は違っても何があっても親友として相手のこと全てを受け入れるというハッピーエンドだと解釈したいです。
そしてもう一人重要な登場人物、恋のライバルがまさかの異性と知り、落ち込んでも二人の気持ちを理解し、「ちゃんと話し合って」と二人を突き放しながらも温かく見守る彼女。本当に男らしいですよね、って、だから女だって⁈
二人とも受験勉強の邪魔しちゃダメだよ!

2024/04/03
台湾加油!