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天国への階段のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

天国への階段(1946年製作の映画)
2.0
No.191[天国で堅苦しい裁判をやったら、パウエル=プレスバーガー映画祭④] 40点

説教臭くて敵わない。出直してこい。

という発言が尤もであることを以下に記そう。
まず、第二次大戦中のヨーロッパ上空、墜落する飛行機で万策尽き果てた主人公ピーターが近くで無線を拾ったアメリカ人娘ジューンと会話する内に恋に落ちる無茶な冒頭を飲み込む必要がある。その後、天国のミスでカーターは死ぬはずなのに生き延びてしまったという「ファイナル・デスティネーション」と見紛うような物語は、ピーターの"そっちのミスで死ななかったんだから俺は悪くない"という一言によって裁判沙汰となり、摩訶不思議な裁判が開始される。

弁護士選びに苦戦するピーターの姿が何とも笑いを誘う。陪審員も世界中の死者から選出され、傍聴席もアホみたいに人がいるくせに裁判官はバッハみたいなカツラを被っていて英国そのままだったのは残念ポイント。んで肝心の裁判だけど、検察側が米独立戦争で英国兵に射殺された米国人だったせいでアメリカとイギリスのどっちが優れているかみたいな話になっていってどんどん退屈になっていく。結局、"最後に愛は勝つ!"という安いメッセージに着地をするのだが、前輪も後輪も出ない状態での胴体着陸な上に爆発炎上している。私を含めた観客の頭の上には夥しい数の"?"が浮かび、煮え切らない物語に頭を抱えていることだろう。
個人的には"この涙が証拠だ"とかキザなこと言わせといて証拠として一切使わなかったことに腹を立てている。

天国をモノクロ、現実世界をカラーで描いている。カラーパートは中々宜しいのだが、モノクロパートが画というより物語に終始していたのに加えて、その物語すら退屈を通り越して悟りを開きそうだった。しかし、悟りを開くには…(以下略)。カラーパートの映像的美しさを見た後だと尚の事残念である。時間止めてるとことか好きだったのに。

死んで間もない兵士たちが"天国の事務仕事は天国だ"とか言いながら新品の翼を渡されてるシーンは爆笑した。でもそこだけだったわ。やっぱりパウエル=プレスバーガーは面白いんだか退屈なんだかよく分からんが、本作品は退屈である(ったく、あと幾つ残ってんだよ)。

追記
ニーヴン好きにとって陰惨たる結果だ。裁判シーンで彼は殆ど出てこないし。でもチョイ役で出てくるアッテンボローを見つけて笑った。
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