広島カップ

どぶの広島カップのレビュー・感想・評価

どぶ(1954年製作の映画)
4.0
終戦後あちらこちらにあったバラック。本作はカッパ沼という沼の周囲にあったバラックに生活する貧しい人々を描いている作品で終戦の九年後に作られた。

毎日生きる事に汲々としてはいるが酒を飲んだり博打をしたりして希望を無くして日々を過ごす人々。彼らの中に腹を空かせて行き倒れ寸前だった知的障害のある女(乙羽信子)が流れ着いた。

女は物事の理解は足りないが明るく陽気でバイタリティがあり、基本的に人を信用して生きているので嘘も容易に信用してしまう純真さがある。

そんな女を見事に演じた乙羽のド迫力にまず感心する。
出て来てすぐに表情筋全開の乙羽。こんなに力んで表情を作って最後まで持つのだろうか?と見守っていたがどうしてどうして最後まで全開のままで完走している。

貧困生活の中で失われてしまいがちになる彼女の持つ人間的な魅力に彼女を失って初めて気づく人達。
彼女を都合よく利用してしまおうと立ち回った彼らが、彼女の死後「すまなかった」と言って泣き崩れる姿に、貧しくても戦後日本人の良心は死んではいないと感じる。
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