三四郎

良人の貞操 後篇 秋ふたたびの三四郎のレビュー・感想・評価

3.0
この作品は前後篇に分かれていたようだが、現在残っているのは再編集版なのだろう。唐突すぎて状況と場面設定にクエスチョンマークがつく箇所がいくつかある。
内容は、実に吉屋信子らしい。しかし、菊池寛の作品と言われても納得できる。女学校時代の親友同士、それに不倫が絡むが、最後は「女同士の友情に勝るものはない」という信頼愛情物語といった感じかしら。
上手く言えないが、入江たか子は『女人哀愁』『禍福』のように、何を演じても入江たか子だ。メロドラマに向いているということか?
今回感じたのは、千葉早智子の演技がなかなかどうしてうまい、いやおもしろいということ。高田稔から朝の不機嫌を謝る電報を受け取り、嬉しさで微笑むのは普通だが、その後電報をひらひらさせながら面白そうに楽しそうに笑う、これは突飛なようで実は純粋な邦子の役柄を見事に捉えた演技だったように思う。

この作品を表す科白は、高田稔の「僕のために生きていてください」と言っておきながら、自分には邦子がいるからと引き下がろうとし、それに対して入江たか子が言う「わたし、どこにも行きません。あなたがこの世にいらっしゃる限り」なのだろう。
男女の仲は複雑で恐ろしいものだ。
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