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価値ある男のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

価値ある男(1961年製作の映画)
3.7
三船敏郎の初海外出演映画。
先に観た「メキシコ無宿」の宍戸錠がメキシコ化するところ、こちらは冒頭から紛れもない時代劇のミフネでした。最初は大きな演技でミフネだけが浮いている印象でしたが、ストーリーと合ったミフネらしいヤンチャな魅力が生かされていました。

スペイン語セリフを三船は全て覚えていたけれど、吹替えになってしまいました。。

ジャケ写が濃いい…

ミフネ演じるアニマスは貧しい農夫。美しい妻と4人の子どもたちに恵まれているが、働かず飲んだくれ家族が稼いだお金を賭け事に使い、さらには愛人までいるクズ男。気性も荒く単純で誰からも嫌われ、子どもたちからも尊敬されていない。妻だけは夫を愛し信じている。

ほとんどの時間が情けないアニマスのダメダメなことに割かれています。それなのに「マヨルドーモ」という村の選ばれた立派な名誉職になりたいという。マヨルドーモになるには、人徳と財力があり、祭り等、全て財産をなげうってでも村人の助けになることをしなければならない。さて、アニマスは生き方、考え方を改め、マヨルドーモになることができるだろうか。

タイトル「価値ある女」にしたいほど、良妻に恵まれていて、教訓ものともいえそうです。

メキシコのオアハカの風習と文化、とくに土着の先住民率の高い地域でスペイン系に虐げられる人々をも描いていました。先祖代々の土地をスペイン系に吸い上げられ、スペイン系が経営する工場で先住民が搾取され、やる気のなくなった男の代表格がアニマスでした。それでも勤勉におとなしく働く人々。支配者層のスペイン系に産まされた子どもは、売買の対象にも😢 

オアハカの誇りは先住民からの初めての大統領を輩出したこと。勤勉に働き学び他人を助けることが推奨される土地柄のようです。

画がよく、撮り方がうまいなあと思いました。

妻や娘たちが着る衣裳が真っ白で胸元にふさがあり、髪の毛をまとめるターバンも独特で、民族衣裳というより、祭祀を司る人々にみえたのも印象的です。

コミカルにダメ男のアニマスに焦点当てながら、背景にあるオアハカの問題も炙り出していて、地元愛を感じました。
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