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シャルロット・フォー・エヴァーのtakのレビュー・感想・評価

3.3
僕が心から尊敬するアーティストの一人、セルジュ・ゲンスブール。60年代からシャンソン界で活躍し、"歌うポルノ小説家"と呼ばれたり、国歌をレゲエにアレンジして物議を醸したり、不可解な映画などの刺激的な作品を遺した。また多くの女性アーティストに楽曲を提供し、プロデュースもこなし、歌手として魅力を増した女優もあまた。そしてブリジット・バルドーやジェーン・バーキンとのスキャンダラスな私生活でも知られる人物だ。

そんな不良老人セルジュが、愛する娘シャルロットの為に撮った、不思議な映画が「シャルロット・フォー・エヴァー」。ストーリーは決して盛り上がることなく、変な親父と妙な娘の姿が淡々と描かれる。セルジュの他の作品を知らないでこの映画を観たら、きっと「?」しか心に残らない。自分なりのエロスを作品で追求してしたセルジュが、ロリータ振りを思いっきり発揮した作品なのだ。

正直言うと胸糞悪い映画でもある。娘の友達にチョッカイを出したり、下ネタでしか会話しなかったり。でも僕は、映画が終わる頃には、このよだれにまみれた不良老人がものすごくカッコよく思えた。自分であることに遠慮なんて必要ない。幼さの残るシャルロットの美しさを、フィルムにとにかく焼き付けておきたかったのだ。髪を洗いながら浴室で踊る姿は、きっと心に残る。娘にここまでさせるか?とも思うけど、偏った愛情表現なのだ。

何よりも僕が気に入っているのはこの映画の音楽。この頃、セルジュはデビッド・ボウイのLet's Danceをいたく気に入って、ボウイのアルバムに参加したミュージシャンを集めて新作「ラブ・オン・ザ・ビート」(ビートはフランス語で男根の意味があり、掛け言葉になっている)をリリースした頃。この映画で使われたギターのカッティングがやたらカッコいい楽曲たちは、シャルロット名義のアルバム「シャルロット・フォー・エヴァー」に収められている。名盤。
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