みみしゃ

炎上のみみしゃのレビュー・感想・評価

炎上(1958年製作の映画)
3.7
「何をしているんだい?
 ああ、驟閣寺を見ていたんだね」

「いつ人が来るかも分からない驟閣を掃除するなんて
 君はよっぽど心の綺麗な人なんだね」

「あんなに美しいものはない
 お父さんは驟閣のことを考えるだけで
 この世の汚いことや嫌なことを
 全部忘れられるんや」

「驟閣を穢したら許さない」

「どうだ
 君はようやく安心して吃れる相手に
 当たったと思ってるだろう」

「真っ暗な人生やから
 スラスラ話もできんくなるんや
 生まれつきの吃りとちゃう
 お父さんもずっと肺炎やった
 お父さんもずっと同じ気持ちだったと思う
 だからお父さんは驟閣のことばかり
 思っていたんやと思う」

「前にこの寺を継ぐに相応しい者がいなければ
 本山にお返しすると言ったことがあったね」
「ええ」
「その私がこの寺の頭に相応しくないと気付いた」

「老師は私のことを隅々までご存知です
 私も老師のことを知っていると思います」
「知っているから何だと言うのだ
 知っていてもわかっていなければ
 知らないのと同じことだ」

「驟閣は誰のもんでもないんや
 驟閣は初めからあったんや
 驟閣は初めから美しかったんや
 君は生きてるものは皆変わると言った
 でも驟閣は生きてるけど変わらへんのや
 俺が変わらせへん」

「誰もわかってくれへんのや」
みみしゃ

みみしゃ