「あの日の朝
枕元に父の振り子があったので
今回はいつもの家出とは違うと感じました
もう戻っては来ないと」
「明日は初聖体拝領だよ
素晴らしい日になるさ
お嫁に行くのとおんなじだからね」
「神父様もそういうけどどうしてなの」
「花嫁と同じ白い服を着るのよ」
「私はお嫁になんていかないわ
お嫁さんだなんてバカみたい」
「どうしてそんなことを言うんだい」
「写真屋さんに飾ってあるから知ってるのよ」
「来てるよ 奥にいる」
...
「飽きたら外に出てもいいけど必ずいてね」
『私のために来てくれた』
「夕方になって2人は帰って行きました
それから私が南を思う時
おばあちゃんとミラグロスの顔が
浮かぶようになりました」
「あの時の父の顔は忘れられません
カフェで書いていたものから顔を上げて
ガラス越しに私を見る目
父はなぜか後ろめたそうでした
でも私は何も知らなかったのです」
「チラシをください」
「大人の映画だよ？」
「知ってます
どれがイレーネ・リオス？
黒髪と金髪と」
「日が暮れてから
街を1人で歩くのが好きでした
写真屋の前はよく通りました
ウィンドウに兵隊さんや
新婚さんの写真に混じって
私の写真があったからです」
「パパが分からないわ」
「こんな小さな時でも
パパのことが分かったかい？」
