囚人13号

ドクトル・マブゼの囚人13号のレビュー・感想・評価

ドクトル・マブゼ(1922年製作の映画)
4.5
元々活劇めいた犯罪ドラマを撮っていたラングはやはり確実にファントマ観てますね。

自分は二巻組のVHS(187分)でしか観てこなかったのだが、今回素晴らしい画質の完全版(270分)を字幕付きで観る機会に恵まれ、改めて実感したのが手元のアップ/手紙の多さ、暗号めいた数字芸と文字の重要性。
催眠がかけられるシーンでマブゼの顔面にカメラが寄っていくと後景が消え、次第に彼以外は何も見えなくなるワンカットのモンタージュも凄い。

眼力凄まじいアップの切り返しが目配せや誘惑の動線として機能し、舞台上の挑発的なダンスはVIP先生((ボソッばりに際どい。
クラブ内や裏町の美術設計も流石本場の表現主義…というかその発信源であるUFA制作なので本物なんだろうが、本編中にマブゼが表現主義について問われるシーンがあり彼はそれに「全て遊戯だ」と応答していて、何やらラング自身の考えがマブゼを介して語られているようで興味深い。

ラングと人間の円環、「囲むこと」の主題はサイレント期においては『スピオーネ』で前衛性を極め、『メトロポリス』『M』以降は俯瞰から捉えられるリンチへと凶暴に姿を変えていく。
囚人13号

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