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その壁を砕けのbeachboss114のレビュー・感想・評価

その壁を砕け(1959年製作の映画)
4.0
ぶっちゃけ『真昼の暗黒』のライトな廉価版だが、ハッピーエンドだけに後味がいい。クラクション鳴らして忌々しい村を突っ切って(壁を砕いて)去っていくラストの爽快感は青春映画の趣。やはり映画はこうでなくちゃ。

ザルすぎる捜査による逮捕から起訴への展開は、ほとんど冗談の域。動機や土地勘は一切スルー。クライマックスの実地検証なんて鬼の所業で、今時ありえない人権スルー。当時は普通にこんなもん?

ストーリー的には偶然の目撃からの解決が減点要素だが、冤罪を晴らそうとする被告や弁護士のみならず、過去の過ちに向き合わねばならない捜査側の心理もバランス良く描いているのは好感。なかでも、警察署長の人格者っぷりに救われる。

限定されたセットと開放的なロケーションの美しさに加え、車、バス、汽車、バイク、自転車といった移動の醍醐味まで、静と動を巧みに行き来する撮影も見どころ。

冒頭のドライブのしつこいほど軽快なカメラワークには、当時の自家用車への憧れや純粋な喜びが満ち溢れていて実に微笑ましい。

あと、声と口調だけで一発で分かる若き日の大滝秀治、そんなところに隠れていたか。
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