藻尾井逞育

亡霊怪猫屋敷の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

亡霊怪猫屋敷(1958年製作の映画)
4.0
「猫というものは昔から魔性の強い動物でしてな」
「お前、見たな?」

久住医師の妻が、転地療養のため郷里の幽霊屋敷と噂される建物に移り住んだ時から、毎晩気味の悪い老婆の夢をみるようになる。久住は檀那寺の住職から、屋敷にまつわる江戸時代からの因縁話を聞かされる。それは囲碁のいざこざから殺害された男とその母親の怨念が、化け猫となって祟っているというものだった…。

物語は"現代篇"と"時代篇"と大きく分けて二つのパートで構成されます。"現代篇"は青を基調にしたモノクロの映像で、不気味な雰囲気で話が進んでいきます。夜の病院で停電なのか真っ暗な中を懐中電灯の明かりを頼りに久住医師の目線で足音を響かせて進んでいきます。途中、死体らしきものを乗せたタンカを運ぶ白衣の男たちが横切ります。冷静に考えると、真っ暗な中危ないだろ、ってツッコミを入れたくなりますが、重たい空気が有無を言わせません⁈階段を上がって二階の久住医師の部屋の前まで、ここまでワンシーンワンカットで引っ張ります。舞台が現在から6年前の回想シーンに代わってもその不気味な重い空気は変わりません。その後物語は一気に江戸時代の"時代篇"へと移動しますが、ここで今までの重い空気から画面が明るいカラーに一変します。最初物語が静かに展開していきますが、化け猫が登場してからはより明るく活気にあふれていきます。はっきり言ってあまりコワくないです⁈老婆の白髪から最近の女性アイドル顔負けのようなネコ耳⁈が飛び出します。手首を丸めて相手を操って引き寄せたり、飛び跳ねまわったりして画面いっぱいに躍動感があふれます。舞台が再び"現代篇"の6年前に戻ると、また空気が重くなります。これで壁の中から猫の声が聞こえたら、ポオの「黒猫」、別の話になっちゃいそうです⁈その後冒頭の現在に戻ると…⁈
中川監督は物語の流れとそれにともなう空気感をとても大切にしているようです。