月うさぎ

ゾンビランドの月うさぎのレビュー・感想・評価

ゾンビランド(2009年製作の映画)
4.5
#32“ENJOY THE LITTLE THINGS”(ささやかな物を楽しめ)

映画の楽しみ方には、大きく分けて3つのタイプがあると思う

①何も考えない。エンタメとして楽しければ良し
②映画オタクの醍醐味。オマージュ、パロディ、小ネタ、俳優のキャリア、監督のルーツなどなど、発見する楽しさ。繋がる映画の世界を丸ごと愛する。
③深読み。映画の裏に隠されたメッセージ
や複数の解釈を考察。
どんな見方も自由ですが、驚く事にゾンビランドはこれらのどの客層にもヒットするスーパー映画なのでした。
アメリカで大ヒットした訳ですね。
ただのゾンビ映画では全然ありません。
第一にホラーではないです。
気持ち悪いけど怖くないですから。

ゾンビ化ウイルスのエピデミックにより、ゾンビランドになってしまったアメリカ合衆国
生き残ったビビリの引きこもり青年と暴力的なワイルドガイが出会い旅をする、というバディものでありロードムービー。そして美人詐欺師姉妹との出会い。主人公コロンバスの成長と恋を描く青春映画でもあります。
この二つだけでアメリカのヒット映画の定番ですが、それだけではなくて、古い西部劇をパロディにしたものでもあります。
彼らはゾンビのいない(と噂される)西部のパラダイスを目指して西へ向かうのです。
襲いかかってくるゾンビ(西部劇ならインディアン)らをなぎ倒し殺しまくって…。タラハシーの拳銃さばきはカッコよくアクション映画としても成立しています。

ただこの西部劇はレトロ趣味ではない。
白人によるネイティブ・アメリカンの虐殺を自己批判する目線で表現されているのです。
主人公たち4人は白人ですが、彼らはむしろ追われるインディアン側の立場のようです。
ネイティブ・アメリカンからしたら大量の移民の白人達はゾンビに思えたかもしれませんね。

映画を観て違和感を覚えたのが、まず名前。
名前は不要。親しくなる必要がないから、という理由で故郷の土地の名で呼び合います。旅を共に続けた後、最後まで。
(ついでにいうなら10年後の続編でも)
もう一点、旅の途中で破壊行動をするシーンで、実に楽しそうにインディアン土産店をぶち壊していますが、これってレイシズム?と、不安になりました。

この二つのハテナ?にも意味があったのです。
やはりネイティブ・アメリカンへの弾圧の歴史を移民のアメリカ人に思い出させるための仕掛けだったのですね。
詳しくはググってみて下さい。色々わかってきます。

「ゴースト・バスターズ」に捧げるオマージュもたっぷり。
ビル・マーレイの出演に対する最大の感謝でしょう
映画内でゴースト・バスターズの映画を観る、ゴースト捕獲ごっこをするにとどまらず、タラハシーが危険を顧みず「トゥインキー」という駄菓子を求めていたのも、ゴースト・バスターズが元ネタだったとは!
トゥインキーって何さ?と謎だったのですが、スポンジケーキをベースにしたお菓子で、現代日本でいうなら「うまい棒」的立ち位置で、東京バナナを劇マズにしたようなものらしい…

こんなにてんこ盛りなのにテンポはいいし
俳優さんは奇跡的にハマり役で文句のつけようがないし、色々語れるし、ストーリーはアレだけど、
この映画って人に観せて一緒に語りたくなるタイプの映画だと思います。

ねぇ「ゾンビランド」観たことある?
月うさぎ

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