広島カップ

ザ・ローリング・ストーンズ レディース・アンド・ジェントルメンの広島カップのレビュー・感想・評価

3.7
今年2019年、史上初アジアで開催されたラグビーW杯。快進撃を続ける日本代表対南アフリカ代表の大注目の一戦の生放送の時間に本作の放映をぶつけて来た日本テレビ。
テレビ局の思惑通りW杯後の録画視聴になりました。

1990年の彼らの初来日公演のチケットを幸運にも手に入れ、生の彼らの姿(芥子粒大ですが)を拝んだ私。当時の心境は日本戦のキックオフを前にしたドキドキ感に近いかそれ以上の高揚感でした。

ストーンズの映像資料の数は活動期間が長いのでビートルズなどは足元に及ばない程多いのですが本作はその中でも脂の乗った時期の彼らの姿を観れる貴重な作品です。

ロックバンドの映像作品というのはジョナサン・デミの『ストップ・メイキング・センス』(1984)以降「ただ映してもしょうがない」「ただの映像資料じゃどうしようもない」という製作者側の姿勢が定着して来ていてストーンズもその例外では無く『シャイン・ア・ライト』(2008)というスコセッシの傑作も生まれています。
しかしそうなればそうなったで「本当に彼らの姿を伝えているの?」「製作者の意図を盛り過ぎてない?」という余計な疑念も自然と浮かんで来てしまいます。

おそらく70年代にストーンズのファンになった方々には本作はシャイン..以上の拍手をもって迎えられるのではないでしょうか。

つべこべ言わずにカッココ良い!!!
ロックバンドの第一条件としてのカッコ良さが本作には十二分に満ちています。

映像製作者の恣意を殊更頑張って入れない、映像テクノロジーとしてまだまだ今に比べれば稚拙だった時代の映像にはそれ故の本物感があるものです。
『ウッドストック 愛と平和と音楽の三日間』(1970)の映像が未だに鑑賞に耐えうるのも同じ理由でしょう。

もう一度言わせて貰いますけど、つべこべ言わずにカッコ良い!!!

ただの映像資料だけどそれだからこそのカッコ良さ。
注文付けるとしたらもっとキースを映して欲しかった。それぐらいはできたでしょぅと言いたい。
ミックとキース、ストーンズには心臓が二つあるのですから。

ハル・アシュビーの『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』(1982)など80年代の広々と開放感のあるビッグスタジアムでの彼らの姿もそれなりですが、本作のような天井のある薄暗い会場での彼らはそれだけで点数が上がります。
もし狭いライブハウスのようなところで間近に彼らに接したら、呼吸が止まって命の危険にさらされるレベルまで行ってしまうのではないかと心配してしまいます。

「ラグビーがあるからどうせみんな録画して後で観るんでしょっ」という日本テレビの番組制作者の適当な態度がハッキリと表れているのが「ミッドナイト・ランブラー」の演奏中にCMを入れて来たこと。
この曲がいくら長いからといって途中でぶった切ってくるとはなんたる暴挙。
例えば聖子ちゃんのコンサートフィルムの中の「夏の珊瑚礁」の途中に 、あるいは北島三郎のディナーショーフィルムの「与作」の途中にCM挟んでくるようなものです。
1990年の彼らの初来日の模様を独占放送した日テレは愛どころかストーンズに対して全く関心が無いことが判ります。
ストーンズフリークをコケにしている。
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